夏。いやはや、早いものですな。受験まであと何ヶ月ですか。数えたくありません。困りものですよ。 いやあ聞いて下さいよ奥さん。私ね、この間の模試でね、志望校C判定だったんですのよ。おほほほほ・・・ なーんて笑ってるバヤイじゃないわけですよ。Cならまだ望みはある。ていうか今から頑張ればまだ大丈夫。苦手な所はわかってる。そう、あとは・・・ 「富松くーん」 「塾行け」 「いやーん、私のお家破産しちゃーう」 富松くんの目は、まるで汚いものを見るかのようで、さすがの私もブルっちまったわけです。だがしかし、この私には夢があるッ!・・・・なんてね!公立でそこそこのとこ受かんないと、やべーんですよ。主にプライド的なものが。浅い生き方?そうですその通り。制服が可愛いのはマストね。 「・・・で?」 「1次関数の利用系を教えて下さい」 「動点?」 "Yes. That's right." 「ホント、お前は英語だけだよな」 「それほどでもー」 「褒めてねえよ」 いつも思うんだけど、この問題最初に考えたやつ誰だよって。なんで点Pを動かそうと思ったの?なんで目眩く移ろいゆく三角形APDの面積なんて求めようと思ったの?えーん数学って難しい。 富松くんは富松くんで、入試対策問題集みたいなものを解きはじめた。・・・・英語。長文に集中しすぎである。私のことなんかすっかり忘れてるだろこんにゃろ!なんでよりによって英語!長文! 「ねーねー」 「ん」 「これができたら富松くんなんかくれ」 「ん」 「とか言って、“はい、なんか”ってゴミ渡すとかナシね」 「あー」 「富松くんの考えなんてお見通しなんだぜ」 「あー」 「あ、富松くんそれthereじゃなくてhereだよ」 「・・・わりい、だいぶうるせえ」 「あべしっ!」 |