『シリアス』

2010/02/23 12:01

突如として蔓延し始めた疫病は、水を媒体とするために瞬く間に感染者が増えた。

廃棄された都市、
その濁った水はまた誰かを侵す

その未知の病魔の抗体を持つ唯一の存在

長く研究所で飼われていた少女を青年は
――……ユフィと呼んでいたが。

彼女は今、逃げていた。

青年が手を引き、
事実上廃棄された街を走る。

その、僅かでも人体に触れれば感染率致死率共に100%の水の中。

そこをあえて走り抜けた2人組に追撃していた研究所の連中も追撃を止めた。

既存の防護服では効果がないとあれば諦めるしかなかったのだ。

「離してっ…もういいんだよ…」
「よくない」

「でも…でも…病気、感染…」
「発症までには個人差がある。
今のうちに逃げるぞ」

「――――――っ!!」

平然と言い放たれた言葉に少女の顔が蒼白になる。この青年は死ぬ気なのだ。

自分と関わったせいで――……

そんな悔恨が少女の足を止めた瞬間、
周囲の水が真っ赤に染まった。

「え…?」

一拍遅れて聞こえた銃声。

姿を表した狙撃手に青年の顔が歪む。


「宝条……貴様…!!」



間抜けな自分の声だけが日常的すぎて
酷く滑稽だと少女は思った。













次回『]』第23話「感染しない理由」「転化」
豪華2本立てでお送りします。


何となく次回予告風味。
23話なのとタイトルはテキトー(笑)
]でイクスって読むイタリア語って格好いい

あ。ちょうど某あさり貝も](デーモ)だわ
…しかしプリーモが格好よすぎるっ!!


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