NPC暴走 行動4
アモル所属の街を走り抜ける三人。先頭を行く騎士―シュトルツが後ろに居る異国風の商人―アーロンへギャアギャアと説教をしている中、アーロンに抱きかかえられた魔女スカルラットはその羞恥から顔を手で覆っていた。そこへ響く、ピコンッ!と言う着信音。スカルラットがその髪と同じぐらい顔を真っ赤にしながらウインドウを開くと、フレンドからメッセージが届いている。
差出人は『テオフラストゥス』。自分をよくからかってくるあの錬金術師だ。メッセージを開いてみると、どうやら海岸の方に今回の騒動の原因があるかもしれないとの事。
「しゅ、シュトルツさん!アーロンさん!!とっ、兎に角一旦何処かに隠れるかしましょうよぉーー!!!」
「その方が良いですね!!流石にあれを相手にするのは私も嫌です!!!」
「おっと、じゃあ目晦ましをしないといけないな」
「うぅ…《召喚:ノーム》!!」
スカルラットが唱えれば、三人が通った後に小人の集団が現れる。その手には地形を変える槌。
「NPCが通れないように道を塞いで!!」
言えば、ノーム達は即座に地面を叩く。すると地面がせり上がり、ゴリラ…もといNPC達の行く手を阻んだ。後方を見てやれやれと足を止めるシュトルツに続き、アーロンも速度を緩めてその場にゆっくりとスカルラットを降ろした。
「そう言えば、さっきスカルさんにメッセージが入ってましたよね?何だったんですか?」
「えっ、えっと、テオさんからで、『海岸の方に今回の騒動の原因があるかもしれない』って…」
「なるほど?さっきの情報と言い、また面白い事になりそうだ」
「…もしかして、先程のあれもあの人の?」
「あぁ。エンターテインメント性抜群だったな」
アーロンの返答を聞いて、シュトルツは頭が痛くなるのを感じてこめかみを抑えた。そしてスカルラットの方を向き、
「信用できるかどうか解りませんね…今までの事もありますし、先程の事も…」
はぁ、と溜め息交じりにそう言う。
「でっ、でも、ぼくは信じるよ!そりゃあ今までのもあるけど…この状況が長引くとテオさんにとっても良くは無いと思ったから送って来たんだろうし…だから、ぼくは海岸に行こうかなって。二人にもついて来てほしいんですけど…」
おずおずと二人を交互に見るスカルラット。その肩に手を置いたのは、アーロンだった。
「手伝うって言った以上、勿論ついて行くよ。私のスキルにある超位魔法は移動にもってこいだし、スカルラットさんの事も心配だしね」
ウインクを一つ。そしてスカルラットとアーロンでシュトルツを見れば、呆れたような苦笑を浮かべて、シュトルツは口を開いた。
「…スカルさんが行くなら、勿論行かせてもらいますよ。信憑性はさておき、それで少しでも事態の解決に繋がるのなら、ということもありますが…何より、いつも力を貸してくれている”友達”の頼みを断るわけないじゃないですか」
「じゃあ決まりですね!」
シュトルツの返答に、スカルラットがパァッと表情を明るくする。それを見てシュトルツも、クスッと小さく微笑んだ。その横で、アーロンが思い付いたように言う。
「なら、応援を呼ぶって言うのもどうだろう。折角だから此方の人手を増やしておいた方が良いんじゃないか?」
「応援…でもぼくフレンド少ないし…」
「何もフレンドだけに頼る必要は無い。自分が所属しているギルドも活用すればいいさ」
ギルド。その言葉に、スカルラットはしょげていた顔を上げる。『円卓の騎士』。自分が所属しているそこは攻略ギルドだ。今回の騒動の情報を得ようと、掲示板を見ている者も居る筈。実際、先程まで自分もチラチラと確認はしていた。
「じゃあ、ギルドの掲示板に書き込みますね!それから海岸に向かいましょう!」
「えぇ、後はそれを見て応援が来てくだされば…」
シュトルツが呟く横で、スカルラットは慣れた手つきで掲示板へと文字を打ち込んでいく。きっと誰かが書き込みを見て、応援に来てくれる。そう信じて。
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掲示板書き込み 513.新米魔女
フレンドから、『海岸に今回の騒動の原因があるかもしれない』との情報を入手しました。
ぼくもこれから同行者と共に海岸へ向かうので、
協力してくださる方はぜひ海岸へ来てください!