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「#エロ」のBL小説を読む
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「マジ無理、終わる気しねー」
「米屋くん、手を動かさないと終わらないのはわかってるよね?」
「へーい」
 気の抜けた返事で再び課題に取りかかったみたいだがあまり捗ってなさそうだ。私に面倒見てくれって頼んできたぐらいだもの。捗らないのも納得だ。おっと、私も米屋くんに気を取られている場合ではない。この夏休みの課題をさっさと終わらして、やりたいことに専念したい。米屋くんは相変わらずうんうん唸りつつ、苦戦しているようだ。……ヒントぐらいなら投げかけたってバチ当たらないよね。私の言葉に真剣に耳を傾ける米屋くんはなかなか珍しい。これで全部解ける気がする、なんてそんなわけないでしょうが。思わず笑いが漏れてしまう。……やっと苗字笑ったなー、なんて私の顔色うかがってる場合じゃないと思うよ米屋くん。私が三輪くんだったらこの人に何て言っていたのだろう。米屋くんと話していると三輪くんとかが話題になるからつい思い浮かべてしまう。……だから、私もそんなことしている場合じゃないんだってば。米屋くんに再度注意をして、課題に集中する。

「やっと、半分……!」
「米屋くんにしてははかどってるじゃない」
「オレにしては、ってなんだよ」
 私も課題の終わりが近くに見えてきたからつい口が軽くなってしまう。ごめんごめんと謝れば、別にその通りだからいいけどなといつもの調子で返ってきた。米屋くんも最初の頃はグロッキーな表情を浮かべて課題と向き合っていたのだが、だいぶ余裕ができたようだ。
「課題お互い早く終わりそうでよかったね」
「んー、まあそうなんだけどさあ」
 米屋くんにしては珍しく言葉が濁ったので思わず頭に疑問符が浮かぶ。どうしたのだろうか。ひょっとしてもっと課題やりたいとか?いや、米屋くんがそんなこと考えるわけがない。

「……オレが苗字に課題の面倒見てくれって言った意味、わかる?」
「米屋くんが一人だと課題終わらせられないからでしょ」
「うわ、そうくるか」
 そこで苦笑いを浮かべられても私は困るんだけど。他に何かあるのだろうか。だって現に米屋くんちょいちょい私がヒントあげないと解けない問題いくつもあったじゃない。
「別にそれだったら秀次とか出水でもどうにかなったじゃん」
「うん、まあ」
「でもオレは苗字が良かったの。こうでもしなかったら夏休みに会えなかったし」
 まあオレとしては理由なくて苗字と会う関係になりたいんだけどなー、って。ちょっと待って、それってどういう意味かわかる?なんてこっち真っ直ぐ見て言わないでよ。さっきまで普通に軽口叩きつつ課題やってたのに、いきなりこんな衝撃発言されても困るんだけど。いや、困るってそうマイナスな意味じゃなくて。米屋くんの言葉に顔が一気に熱を持つのがわかる。
「それって、」
「ん、続きは課題が終わってからなー」
 だから苗字もいい返事考えといてくれよな、そう言い米屋くんは最初とは全然違う楽しそうな顔つきで課題に取りかかる。自分だけ言いたいこと言って私のは遮るなんてずるい。いい返事、って何よ。頭の中がぐるぐると、考えることが一気に増えて課題と向き合っていた手がつい止まりがちになってしまう。さっきの米屋くんと私の立場が反対になった。これは私が課題が終わったあとが怖くて先延ばしにしているとかではない。……いや、情けないけど少しぐらいはそれもあるかもしれない。返事は米屋くんの望むものに決まっているのに。自分でも気づかなかったが私はだいぶ臆病な奴みたいだ。

20140812