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 二人揃って、電車に揺られる。おれたちの手荷物を見れば、どこに行っていたなんて予想がつくだろう。おれたちが行ったのは、俗に夢の国と言われる場所だった。なまえの押しに負けて、よく知りもしないキャラクターの被り物を購入して、それをつけてあの中をうろついた。ファストパスを取るために園内をかけずり回ったり、やたらと種類のあるポップコーンを食らったり。さすがにマスコットキャラクターと2ショットを撮るのは遠慮したが。何とかというキャラクターをモチーフにした食べ物は少ないけどやたらと高かった。なまえがプレートを持ち帰れるものを頼んで嬉しそうにしていたのが印象的だった。というか、なまえはあそこにいる間すっげー幸せそうにしていた。アトラクションはめちゃくちゃ混んでるけど叫んだりするようなおれ好みのやつではなかったし、パレードも光ってすごいっちゃすごかったけどなまえのきらきらしてる目を見てる方がよっぽど面白かった。いちいち混んでてテンションが下がったときもこいつの幸せそうな顔を見ているとどうでもよくなることが今日何度もあった。
 そのなまえは今もおれとペアで買ったストラップを見てご満悦だ。何でも一番好きなキャラクターの組み合わせらしい。おれは別に何でもよかったが。それにしても女子という生き物はたかがテーマパーク一つでここまで幸せになれるものなのか。
「おまえ、今日顔ゆるみっぱなし」
「えー、そうかなあ」
 なまえの声色は気が抜けるようなそれだ。携帯端末につけられたストラップをゆるゆると撫でながら適当な相槌ばかりうっている。
「そんな楽しかったか、あそこ」
 自分がそんなに楽しくなかったかとも捉えられそうな発言だ。楽しくなかったというか、こいつがいなかったら行ったりする理由もなかったから、つい。
「そんなの、公平くんと一緒だったからだよ」
 大好きな人と行くのが夢だったんだよ、にこにこと相変わらず附抜けた顔をこちらに向けながらなまえは言葉を続ける。……ふーん。じゃあお前は他の奴と行ったところでこんな風に隣で間抜けな顔を晒したりはしないんだ。そんなことが過ぎってもダサいから口に出したりはしないけど。こいつは簡単な言葉でおれの頭をぐちゃぐちゃにかき乱してくる。
「あー……おれ、寝るから三門着いたら起こして」
 狂わされた調子をごまかすようにあくびをして、なまえの肩にもたれかかる。なんてことないみたいにわかったと言って、さっき買ったお土産をがさごそといじっているのがすっげーむかつく。こいつ普段はおれがちょっといじっただけで顔真っ赤にさせるのにこういうときは平気そうにしやがって。こういうところが好きだなんて絶対言ってやらないけど。ゆるやかに揺れる車両の中で、そんな考えを蓋をするように瞼を閉じた。

20120921