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「#エロ」のBL小説を読む
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 私は手がとても冷たい。お風呂に入って温まってもそれがほとんど持続されることもなく、お風呂からあがって身体を拭いて、服を着て、ボディクリームを塗るなり何なりしている間に冷え切ってしまう。私は気付いたときにはそれだったので慣れているし、仕方ないものだと割り切っている。
「お風呂あがったよ」
「ああ」
 部屋に戻るとカラ松くんは一瞬テレビからの視線を外して、私の方を見たが、視線はすぐにテレビへと戻される。そのテレビに夢中な彼の隣に座る。そこが私の定位置だからだ。どうやら彼はバラエティーを見ているようだった。
「面白い?」
「ん、よくわからない」
「なにそれ。あ、ドライヤー取って」
 ドライヤーがカラ松くんを挟んで向こうにあったので取ってもらうように頼んだら、彼の渡してきた手と私の受け取った手が重なった。別に今更手が触れ合ったぐらいで緊張してしまうほど初ではないのだが、カラ松くんはとても驚いているとでも言いたげな顔だ。一体どうしたというのか。
「風呂に入ったのに冷たい……! 死んでるのか?」
 私の手を見つめて、真剣な顔でそんなことを尋ねてくるから思わず脱力してしまう。死んでるのか、ってなんだ。カラ松くんは今の今まで何と付き合っていると思っていたんだ。たしかに私の手は冷たいし、それに対してカラ松くんの手は温かいけど。
「いや、めっちゃ生きてるよ。冬はいつもこうだよ」
「そうか……」
 はっきりしない相槌を打ったかと思えば、カラ松くんは私の手を自分の手で包み込んだ。それでも私の手はまだ冷たいのでさすったり、握ったりされる。さすがに少しばかり恥ずかしい。手より先に触られてもいない頬が熱くなってきた。
 私はドライヤーを取ってくれと頼んだはずなのに、手を握るのに邪魔だったのかそれは元の場所に戻されてしまった。髪を乾かしたいとか、早くカラ松くんもお風呂に入りなよとか言いたいことはいくつもあるのに、カラ松くんの手の温もりが心地良いため、ふりほどくこともできない。自分の手が冷たくてよかったかも、なんて思う日が来るなんて思ってなかった。