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なまえが死んだ。高専から依頼された任務に一人で行ったかと思えば突如あらわれた特級呪霊に敗れたらしい。
なまえの遺体は存外綺麗だった。呪霊のせいで死んだとなれば、手足の一つや二つがない状態で戻ってくるのもこの界隈では珍しいことではないのにもかかわらず、なまえの遺体は四肢全て繋がったまま寝かされていた。亡くなったと知らなければ眠っていると錯覚してしまいそうだ。ただし腹に穴は空いているらしい。自分は悪趣味ではないので見る気が起こらない。
同業者が亡くなるなんて特段珍しくも何ともない。仕事柄どうしようもないことだ。当然なまえ以外の知り合いが死んだことだってある。なまえが死んだところでこの界隈に大きな影響もない。今こうしてなまえの所に来ていてなまえと特別親しいように見えるかもしれないがそうでもない。あいつには私以上に仲睦まじい同期がいたはずだ。全員死んだかもしれないが。そこまで興味がないので記憶が不明瞭だ。
私はなまえと親しいというよりも、奴に懐かれていたという表現の方が正しい。
今日こうしているのも、偶然任務が早く片付いたから、なまえが灰になる前に最期に会えただけだ。私がなまえに会いに来るなんて、この場で彼女が生きてたら阿呆みたいにはしゃいでいただろう。可笑しな仮定だ。本当、あいつは私の事が大好きだったな。

「私のために死にたいって言っていたくせに」
なまえは私に会う度に好きとか、私の力になりたいとか言ってきた。私より弱い癖に、殊勝な心掛けだ。憂ほどではないが、私にしては可愛がっていたと思う。強くはないが弱くもない、賢くないが、大馬鹿でもない後輩はそれなりに可愛かった。明確な理由もないのに自分を好いてくれる妄信的な後輩に対してある程度愛着が湧くのは至極同然のことだろう。私にも人の心はあるんだ。
正直、なまえが死んでも私のこれからには何一つ影響はないはずだ。あいつが言った言葉は嘘だったなと時々過ぎるぐらいだ。
あの世で会ったら勝手に死ぬなんて契約違反とか適当な理由をつけて金でもせびってやろうか。それでも彼女は締まりのない顔で笑うんだろう。
私はもしもの話は好きではない。考えることをやめたいが、もう少しだけ駄目な後輩に思いを馳せることを許されたい。

20201009