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 宿儺を取り込んだイタドリくんを、真依ちゃんは穢らわしいと言った。東京の、イタドリくんの仲間だった子を煽る際の発言なので本心ではないかもしれないが、真依ちゃんがそう言うのならそうなんじゃないかと思う。正直、イタドリくんの存在が正しいのかそうでないのかはわたしにとってどうでもいいことだ。
 ただ、ひとつ気になることがあった。イタドリくんとやらは宿儺の指を口にすることで、力を取り込んでいたらしい。力がどうこうかは置いておくが、口にして取り込むのはいいなって思った。
 取り込むのにはさほど興味が湧かなかったが、取り込まれるのはいいなあって思った。指が食べられて、一部になるのはとてもロマンチックな気がした。わたしも真依ちゃんに取り込まれて、彼女の一部になりたいなあ。
 ただ、問題がある。指を真依ちゃんにあげるとしてもどこの指がいいのだろうか。呪具を扱うわたしは、どこにしたとしても割と支障が出そうだし。そのせいで真依ちゃんの足を引っ張ることになるのはいやだ。真依ちゃんに守られるぐらいなら、彼女を庇って死にたいのに。
 生きている内は難しそうだ。死んでからならいいか。わたしには真依ちゃんと同時に死ぬか、先に死ぬ以外の選択肢はない。それならどこを選んでもらっても支障はないし。今日からわたしはどんなに酷い死に様になったとしても指だけは遺せるように気をつけないとだ。
 わたしとしてはやっぱり小指か薬指をもらってほしいところなのだけど、もしかしたら別のところを欲しがるかもしれない。生きている内に、真依ちゃんの希望を聞けたら、そのためにも頑張れるかな。

「真依ちゃんは死んだわたしから指をもらうとしたら、どこがいい?」
「は?」
「死ぬ間際、最期に呪力込めておくからまったく使えないとかはないと思うよ。真依ちゃんがわたしの呪力を取り込んだとしても、相性が悪くてどうにかなるとかは有り得ないだろうし。どこがいいかな?」
「私、アンタの指がほしいなんて言ったことある?」
「ない」
「死んだなまえの一部なんていらないわ」
「もらってほしいなって思ったから言ったのに……」
 でも、真依ちゃんがいらないならいいか。わたしは死ぬ際に何も遺す必要がないようだ。
「……もう、アンタのは十分」
「真依ちゃんに何かあげた記憶ないんだけどな」
「偶には私の言うこと以外で物を考えなさい」
 真依ちゃんはわたしより聡いので、難しいことを平気で言う。わたしは真依ちゃんの言葉だけ、汲み取って生きていきたいんだけどなあ。十分ってことは、もうわたしはいらないって事なのだろうか。それなら、真依ちゃんを置いて死ねるのか。真依ちゃんに置いていかれる可能性がある未来を待つより、今死んだ方がいいんじゃないか?
「……なまえ、もう自分がいらないとか思ってるのなら殺すわよ」
 真依ちゃんに殺されるのなら本望だよ、と答えたら違うと言いたげな顔をされながらまあまあ強めにひっぱたかれてしまった。やっぱり真依ちゃんは難しい女の子だ。多分今死んだら真依ちゃんはとても怒るので、もう少しだけ長生きできるようにしよう。