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 遊木くんに今度の週末空いていたら付き合ってほしいところがあるとお誘いをいただき、断る理由もないためそれに応じたら「じゃあなまえちゃんの行きたいところを考えておいて」と素敵な笑顔で言われた。付き合ってほしいところがあるのに、私にも考えておいてというのには少々疑問が浮かぶもののまあよしとしよう。でも行きたい場所、といきなり言われても急には思いつかないし、ついたとしても遊木くんの考える行き先との折り合いもつけたいところだ。私の返事を聞くなり足早に去ろうとする彼を呼び止める。

「いこっか、なまえちゃん」
「うん」
 週末の予定について放課後に話したいと提案したら、遊木くんは快く応じてくれた。その時顔を赤くさせてごにょごにょと何か言っていたようだが私には聞き取ることができなかった。
 普段と違って約束があるから行動を共にすると言うことは、何だかむずがゆい。クラスが同じだから、教室を出るところからずっと一緒だ。それが余計に気恥ずかしさが募らせる気がする。遊木くんもいつもスバルくんとかが居るときより大人しい気がする。人で賑わう繁華街にまで来たというのに私達は静かだ。お茶でもしながら話せればいつも通りに、と思ったのだが学校周辺は放課後ということもあって学生が賑わっていて、その子達の視線がちらほらと刺さる。その矛先はもちろん私なんかではなく遊木くんだ。そうだよね、普段一緒だから慣れてはいるものの彼は有名人の枠に入る人で、彼が歩いていたら注目を浴びてしまうのは当たり前だ。ましてや同世代の人が募っているここ周辺でお店にはいるのはあまりよろしくないかもしれない。
 どうしたものか、と辺りを見渡しているとクレープの移動販売車が視界に入る。人もそこまで並んでいないのですぐに品物にありつけそうだ。というか、見ていて久々に食べたくなったというのもある。近くに小さな公園があったから、そこで食べながら予定を考えればいいかな。遊木くんの様子を伺ってみると、彼の視線も私と同じところに行っていたので私の希望は通りそうだ。

「お茶で大丈夫?」
「ありがとう」
 遊木くんには先に公園に行ってもらい、私がクレープ屋で注文するという形をとったのだが気を利かせて飲み物を買っていてくれたようだ。甘いものを頼んだのでありがたい。私はバナナチョコクリーム、遊木くんはいちごチョコクリームをチョイスした。完成を待つ際にクレープ屋のおじさんに遊木くんを彼氏と勘違いされたことを笑い話のつもりで話したのだが顔を赤くされてしまい誤魔化そうとしたはずの恥ずかしさは更に膨らむだけだった。いつもなら誰かしら口を挟んでくれるのに二人だとこんな空気が流れてしまうのか。気まずさを抱えながらもクレープを一口かじる。
 久々で外れを引きたくなかったので王道を頼んだのだが、今までに足を運んだどこのクレープ屋にも存在しているだけあってやっぱりおいしい。恥ずかしくてもそれは揺るぎのない事実だ。少しの間見ることができなかった彼の横顔を見てみると満足そうにクレープを頬張っているのでほっとした。その口元にクリームがついていたのでそれを指摘をすると彼はその反対側を拭いだした。遊木くんなら絶対やると思っていたものの、いざ目の前でやられると面白くてつい笑みがこぼれてしまう。何で笑うのと頭に疑問符を浮かべる遊木くんは、男の子には悪いが「可愛い」という印象を抱かずにはいられなかった。彼と二人の時間が増えたら、他の感情も芽生えたりするのだろうか。ふと浮かんだ疑問に、まだ理由をつけたくないがこれなら週末も楽しく過ごせそうだ。