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「仮にも女の子でまともなアクセサリーがないなんてみっともないってだけだから」
 いつものように家まで送ってもらい、後はお別れだけというところで泉さんに紙袋を渡される。泉さんの台詞から察するに、紙袋の中身はアクセサリーなのだろう。紙袋には見たことのないブランド名が記されていた。たしかに自分はアクセサリーといえば雑貨屋に売っているような、手頃な値段のものしか身に付けていない。泉さんと付き合うようになってから服装には気を遣うようにしていたが、そこまで頭は回らなかった。そんなこと改めて言ったら更に呆れられてしまうのはわかっているのでお礼だけ述べることにしたら「次会うときにしてこなかったら承知しないからね」と釘をさされた。何でこの人は礼を素直に汲んでくれないのだろうか。もう慣れたから良いけど。

 帰宅し、お風呂にも入ってある程度落ち着き、もう家に着いているであろう泉さんに連絡を入れる前に先程もらったプレゼントの中身を確認することにした。一番外の紙袋の時から思っていたが、箱すらもお洒落だ。外装に怯み、無闇に衝撃を与えないように箱を開けてしまうあたり私の庶民っぷりがうかがえる。
 泉さんからのプレゼントの正体はチョーカーだった。素材は革らしきもので、黒を基調としているので大人っぽく見えるが赤いリボンのチャームがアクセントとなっているのでちゃんと可愛らしい。今までにこれ以外のチョーカーを何度も見たことはあるものの、サイズ調節はどうなるのかと思っていたのだが、そういうところも泉さんが気を回してくれたのか形式がベルトと同じなので困ることはなさそうだ。なんだかんだで総括すると、センスがいい。普段モデルの仕事をこなしているだけある。
 改めて素敵なプレゼントありがとうございますとメッセージを送ったら、明日から二週間ほどのスケジュールが書かれたメッセージが届いた。日付の後ろにマルやバツが記されていて、このうちから会える日を教えろということなのだろう。私の言いたかった主な内容には一切触れてこない。言葉のキャッチボールとは。仕方がないからこの日なら空いているからどうですかと返信したら、求めていた答えだったのか割と早い段階で「わかった」とだけ返ってきた。よし、その日はお気に入りのワンピースを着ていこう、なんて考えてしまう辺りだいぶ浮かれているようだ。

 当日、忘れずにチョーカーを身につけてきたが、何だかこそばゆく感じる。泉さんにもらったものだからだろうか。改めて言うと恥ずかしいな。泉さんの家に向かっている途中も何度も触れてしまう。家に辿り着き、インターホンを鳴らす。
「いらっしゃい」
「お邪魔します」
 泉さんは私と顔を合わせるなり、頭から爪先までじっくりと見る。服装に文句を言ってこないから及第点なのだろう。気づけば泉さんの視線はチョーカーへと注がれていた。何かおかしかったのだろうか。実はこれチョーカーじゃなかったとか?そうなるとすごく恥ずかしい。チョーカーと思っていた物に触れると「変じゃないから大丈夫」と言ってもらえたから一安心だ。
「泉さんがそんな風に見てくるからなんか変なことしちゃったのかと思いました。これ、すごい可愛いです」
 嬉しい気持ちを前面に出してみたのだが、泉さんは相変わらずだ。私の首元を見つめて、何か考えるような顔をしている。勝手に気まずくなっていると首元に手が滑ってきたので思わず肩が竦み、その拍子で俯いてしまう。すると首とチョーカーの間に指が割り込み、それに引っ張られて泉さんの方を向かされる。苦しいっていう訳ではないのでいいのだが、相変わらずこの人の意図は読めないままだった。目が逸らせない。そこまで時間は経っていないはずなのに、すごく長い間されているみたいだ。
「こっち向かせやすくなったから、悪くはないね」
 泉さんの言葉の意味はあまりよくわからなかった。こんなことされなくたって、ずっと貴方のことを見ているつもりなんだけどな。そんな考えは降りてきた唇で溶かされてしまいそうだ。