text log | ナノ
 増えていく手元の紙袋を眺め溜め息をついた。これは全部数歩先を歩く彼女のものだ。女子の買い物に付き合うのって予想以上に大変なんだな。なまえと一緒だからそこまで苦ではないけれど。
 いつものようにサッカーの練習を終え、後日オフを控えていたところなまえが訪れ、いつも私はタギーの好きなことに付き合っているから、タギーも私の好きなことに付き合ってと言ってきたのだ。
 たしかになまえにはサッカー関係のことでお世話になっているし、オフの予定も特になかったのでその言葉にうなずくとなまえは年上とは思えないようなあどけなさを抱いた表情をこちらに向け、待ち合わせの時間と場所を述べた。今思い返してもあれは可愛いと思う。
 デート(なのだろうか、これは)の内容はショッピングだった。そうか、なまえの好きなことは買い物だったのか。今日初めて知ったことだった。
 買い物のさまは年相応かそれ以上だった。あのお店可愛いと呟けばすぐさま入っていき、あれもいいこれもいいとぶつぶつ唸っては両方とも購入することなんてざらだった。財布からお金が抜き出されていくところは何となく目をそらしてはいたが、結構出していたのではないかと思う。稼いでるってすごいんだな、とぼんやり考えていた。少し自分と彼女との距離を感じたのは内緒だ。
 一応年下とはいえ男子である自分が手ぶらで、女の子であるなまえの手がふさがっているのはどうかと思い、荷物を持つと申し出たらなまえは嬉しそうにしてくれた。その後段々荷物、紙袋が増えていき重さはともかくかさばるので持つことが大変だった。
 日が傾きかけてきた頃に、そろそろ帰らないとだねとなまえに告げられた。もうそんな時間になっていたことに驚いた。サッカーをやっているときと、なまえと一緒にいる時間は早く流れる。 
「タギー、ありがとう!」
 荷物が多くて大変だったでしょう?という問いかけに素直に頷けば何故か可愛いなあと笑われてしまった。
「タギーとショッピングデートできてよかった」
 あ、やっぱりこれデートだったのか。改めて言われるとなかなか恥ずかしいな。好きな人と好きなことができるなんて幸せ、という言葉に更に顔があつくなるのがわかった。
 まあ、私の一番好きなことは大好きなタギーがサッカーしている様を見ていることなんだけどね。
 照れくさそうにそう言ったなまえが可愛くて抱きしめたかったのだが手元の紙袋に塞がってそれは出来ず、今日二回目の溜め息をつくことになった。

20120307