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 目を輝かせた虎丸くんに好きだと告げられた。この間本性を露わにさせたけどやっぱり小学生はあどけなくて可愛いなあと思う。私も虎丸くんのこと好きだよと返したら、本当ですか?と嬉しそうに問われた。相変わらず目はきらきらとしている。その問いに頷いたらありがとうございますとのことだ。じゃあこれからよろしくお願いします!と手を握られた。これからもマネージャーと選手として、ってことだろう。改めてそんなこと言うなんて礼儀正しい子だ。
 あの日からやたらと虎丸くんの距離が近くなった。ことあるごとに隣に来るようになった。私はそれを懐いてくれているのかな、可愛いぐらいに捉えた。手を繋いでくるのは、家族とか仲のいい人が恋しいのかと思った。というか、私の頭がそう思うようにしたみたいだ。何かのはずみで抱きしめられたとき初めてこれはおかしいのではと考えるようになった。何であろうともう色々と手遅れだった。
 虎丸くんが以前私に言ってきた好きの意味は私の考えていたものよりも遙かに重かった。洗濯物を届けに虎丸くんの部屋にいったら私が明確におかしいと思うようになったきっかけでもある抱擁をされた。それだけだったらまだ流せるかと思ったのだが無理だった。最近の小学生はませているようで虎丸くんは私の頬にキスしようとしてきたのだ。頬ならまだ可愛いものだと思う人もいるかもしれないが私はそんなことしたことないから無理だ。これはマネージャーと選手の関係を遙かに越えている。ちょっと待って、と虎丸くんに制止を促してみたら虎丸くんは目を大きくさせて驚いた。いやでしたか?って小首を傾げないでほしい。何だかんだでそういう仕草は可愛いと思ってしまうから。
「いやも何も、私は虎丸くんとそういうことをする関係じゃないよ」
 私は以前の虎丸くんの言葉の意味を誤解していたと伝えた。虎丸くんはとても悲しそうな顔をした。勘違いとはえ彼にそんな顔をさせてしまったことに胸が痛む。虎丸くんは居心地が悪そうにベッドの上で膝を抱える。じゃあ好きって言われて嬉しかったのは俺だけなんですね、と漏らした呟きは自分勝手かもしれないが訂正させていただきたい。
「虎丸くんに好きって言われたのは嬉しかったよ」
 まだ、多分虎丸くんが言ってた意味とは違うけど。そう言えばまだって何ですかと噛みつかれた。わかんないけど、まだ違うって思ったんだもんって答えたら俺より年上なのにわからないことがあるんですね、といつぞや本性を出したときのように生意気な口振りだ。まあ、虎丸くんの調子が戻ったのなら何でもいいかな。洗濯物を届けたし、誤解も解けたしもう私の用事は済んだので部屋から去ろうとしたら後ろから声が掛かる。
「じゃあそれを俺と同じ意味にするように仕向けるので、覚悟してくださいね」
 ……前言撤回だ。虎丸くんにいつもの調子でいられると私がもちそうにない。もう大分彼の方に傾きつつあるようだ。