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※RL本編終了〜キンプリ本編開始ぐらいの時間軸

 今日は涼野くんと一緒に帰る最後の日だ。涼野くんが東京に引っ越すことになった。戻ると言った方が正しいのかもしれない。涼野くんのお家は元々東京で、今でも東京には涼野くんのお父さんとお姉ちゃんが住んでいるらしい。詳しいことはよくわからないが、色々あってそっちの一緒に暮らすになったようだ。涼野くんが嬉しそうにしていたから、いいことなんだと思う。でも、涼野くんがここからいなくなってしまうのはいやだった。家が割と近くで、帰り道が一緒の人がいなくなってしまうからかな。
 涼野くんはわたしにプリズムショーの魅力を教えてくれた人だ。涼野くんは東京にいたからか、プリズムショーについても詳しかった。こっちではプリズムショーに関する情報を取り入れるのが難しく、わたしもそれがすごいということは知っていたがなかなか触れる機会がなかった。涼野くんはそんなわたしにプリズムショーを見せてくれた。パソコンの画面越しのライブなのに、とても感動したのを覚えている。どちらかというとシャイな涼野くんが、プリズムショーのことになるといきいきするのも面白いなと思う理由の一つでもあった。わたしも、自分でやってみたいと思って始めてみたのはいいが、まだまだぜんぜん下手くそだ。涼野くんとの思い出はプリズムショーのことばかりだ。
 涼野くんの後ろ姿をぼんやりと眺めながら歩いていると、もうわたしの家がもうすぐというところまで迫っていた。次に学校に行ったとき、涼野くんはもういない。いつももそんなに帰り道でいっぱいおしゃべりをするわけではないけど、今日は何かを言わないと。もうこれでさよならなんていやだ。
「……涼野くんは、東京に行ったらエーデルローズに入るの?」
「うん。速水ヒロを越えるんだ!」
 エーデルローズがすごいというのも、涼野くんに教えてもらった。わたしには縁のない話だけど、涼野くんにとっては違うのだろう。わたしの質問に、楽しそうに答える。あっちでのことを前向きに考えている涼野くんを見るのはもやもやする。
「そっか。……涼野くんがヒロさまならわたしは、べるさまに負けないようなプリズムスタァになるね!」
 涼野くんは、べるさまの名前を出すと途端に動揺した。わかりやすいなあ。べるさまのプリズムショーを説明するとき、とても熱が入っていたし。ヒロさまをやたらと『めのかたき』にするのもべるさまとうわさになっていたからだろう。涼野くんがべるさまのファンだと気づくのにそう時間はかからなかった。わたしにとっても、べるさまはかっこよくて、きれいですてきなプリズムスタァだ(涼野くんが会ったと聞いたときはずるいと思った)。他にも、彩瀬なるちゃんとか、涼野くんのお姉ちゃんのいとちゃんとか、すごい人はいるのはわかっているけど、その中でも特にべるさまに負けたくないと思ったのだ。涼野くんに聞いたら理由はわかるのかなあ。
「……蓮城寺べるとか言う前にみょうじさんはまずプリズムジャンプを成功させなよ」
「うっ……すぐに連続ジャンプも成功して、こっちで有名なプリズムスタァになってみせるもん!」
 涼野くんの目が冷ややかだ。絶対できないだろって思ってるのだろう。悔しい。
「期待はしてないけど…………みょうじさん、またね」
「! またね、涼野くん」
 涼野くんがいつもと同じように別れの挨拶を言ってくれたのがうれしい。正直、もうやらなくなってしまうのではないかとも思ったが涼野くんがきっかけで始めたプリズムショーをもっと頑張りたくなった。次に彼に会う日が来たら、とっておきのプリズムジャンプを見せたいから。