text log | ナノ
「なまえはオレが他の子に可愛いって言っていても平気なのか?」
 抱いていた疑問を彼女に投げ掛けた。オレは可愛い女子が好きだ。大好きだ。その中でも一番はなまえだけどな。正直なまえと付き合っている今でも、可愛い子は可愛いと思う。だが不思議なことになまえ以外の女子を可愛いと言ってもなまえは付き合う前のように笑い、特に嫉妬とか怒りの感情を見せることもない。それを不思議に思い彼女に聞いてみるとなまえは何で私が平気じゃなくなるのかと聞いてきた。まさか質問を質問で返されるとは。相変わらずなまえはいつものようにニコニコと笑っている。
「由孝くんのそれは、人のいいところを見つけるのが上手ってことでしょう?とても素敵なことだと思う。私はそんな由孝くんが大好きなの」
 先程疑問で返されたことよりも予想の斜め上の答え。自分は笠松と違い、クサい台詞もすらすらと出る質のはずだが、なまえの言葉には正直いってとても照れた。まさか自分の悪癖(自覚はそれなりにしている、それなりにだが)までもが好きだと言われるなんて。この言葉といい、だからなまえが他の女の子と異なり、特別なのか。
 まずいな、一見平静を保っているつもりだが普段のような軽口を叩けない。いつもの半分は本気でもう半分は冗談な気障な台詞をなまえに言ってやることもできない。まったくそれらが頭に浮かんでこない。それほどまでに、先程のなまえの言葉は強烈なのだ。オレが内心焦りやら羞恥で渦巻いているのになまえは平然としている。何だこの敗北感。
 色々と誤魔化すかのようになまえを抱きしめる。これ以上みっともないところは見せられない。オレの考えてることを知ってか知らずか幸せそうな顔しているのが何だか悔しいな。
「由孝くんに抱きしめられるとすごく安心するし、どきどきする」
 由孝くん以外の男の子に抱きしめられたこと、ないんだけどねと恥ずかしげに呟く目の前の可愛い生き物は何だ。ああ、オレの恋人か。腕の中の彼女が更にいとおしくなり、抱いてる腕に更に力をこめた。

20120809