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「腹減った、何かねぇ?」
「持ってませんし、図書館は飲食禁止です」
 気が利かないとぼやくのは青峰大輝くんという男だ。この大柄な見た目で何と同じ一年らしく、強豪バスケ部のレギュラーだと小耳に挟んだ。……私の記憶に誤りがなければバスケってインドアスポーツだったのだが、どうして青峰くんはこんなにも黒いのだろうか。言ったら怒られそうだから黙っておこう。
 そんな青峰くんが、何故文化系御用達の図書館にいて、文化系代表の私と一緒にいるのか。今の時間は放課後で、強豪バスケ部なら練習が休みになることはそうそう無いと思うのだが、彼はしょっちゅうここに来ている。
 前に理由を聞いた際には詳細は曖昧にされたのだが、青峰くんは俗にいうサボり魔らしい。今一つ説明が足りなかったので納得できるかと聞かれれば否だが、あれ以上は青峰くんが不機嫌になりそうだったので多くは問わなかった。
 何故図書館にいるのかと聞いたら、教室では良くん(部活の友達かな?)という人がうるさく、屋上でも大抵誰かに捕まってしまうらしい。でも図書館は捕まることがないとのことだ。理由は部活の人が自分の様な奴が図書館にいるなんて想像つかないから、らしい。青峰くんは得意気だったけど、あまり自慢にはならないと思うんだけどな。

「なまえさん、返却された本元に戻しておいて」
「あ、はーい」
 ぼんやりと考えていると司書さんに仕事を頼まれた。それに何故か青峰くんも着いてきた。
「別に見てても面白くないと思うんだけど…」
「別にダメって訳でもないだろ」
 確かにそうだけど。コードの番号に従って、本を戻すだけの単純な作業だし。これ、たまに適当に戻す人がいるから後々で面倒な思いすることあるんだよなあ。あと一冊は……あそこかな。

「っと、」
 目一杯背伸びをしたものの、微妙に棚には届かない。悔しいけど仕方ない、台取ってこよう。そう思い踵を返そうとしたが青峰くんに引き留められた。先程まで持っていたはずの本は何故か青峰くんの手元にある。
「ここか?」
「あ、うん……」
 私では置くことができなかったその本は青峰くんによって本棚の上段に収められた。よし、これで本の整頓は完了だ。
「ありがとう、青峰くんがいてくれてよかった」
「……おう」
 お礼を言うとぶっきらぼうに返された。青峰くんはお礼を言われるとむず痒くなる人なのかな。私もそういう質だから何となくわかる。
「……お前さ、何でオレが図書館に来てるかわかるか」
「んー、……部活をサボるため?」
 青峰くんが呆れたように有り得ねぇと呟く。え、だって前に言ってたじゃない。心変わりでもしたのだろうか。男の子も心変わりって激しいものなのだろうか。
「オレもそんな考える方じゃねーけど。お前、もう少し考えろ」
「なにが……わっ!」
 疑問を抱くと同時に頭を乱暴に撫で回された。うーん、私には青峰くんが今一つわからない。
「あー……今日はもう、部活行くわ」
「うん、頑張って」
「そんな必要ねーよ、……なまえ」
 覚悟しとけよ、何のことかと訊ねようとしたが青峰くんはもうその場を後にしていた。
 私が青峰くんの言葉の真意を知るのはまだ先のことだ。

20120703