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「#エロ」のBL小説を読む
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 テーピングが施された左手に触れる。大きさを比べるように自分の手と合わせてみたが当然彼の手の方が遥かに大きい。彼は特に何も言い出さずに私を見つめている。そんなに見られると恥ずかしいんだけどなあ。合わせていた手を絡ませると彼は予想外だったようで僅かに目を見開いた。それでも振り払ったりしないところが好きだな、なんて。
「……どうした、なまえ」
「何でもないよ、ただ」
 こうして緑間と手を重ねることができる私はとても幸せ者なんだなって思っただけだよ。そういうと目の前の彼は馬鹿を言うなとそっぽを向く。憎まれ口を叩いたものの耳は真っ赤なんだ。それが高尾くんにツンデレと称される所以なんだよ、可愛いんだから。
「緑間の手、好きだよ」
 つう、と指を滑らせる。その手でどれ程の勝利を掴んできたのだろうか。そしてその裏ではどれ程の努力を積み重ねてきたのだろうか。
 無機質なテーピングが施されているのに、私に触れるときの手はとても優しい。
「……手、だけか」
 好きなのは、と少しばかり不機嫌そうな声。バカだなあ、そんな訳ないじゃない。思わず笑うと緑間は何がおかしいと言わんばかりに顔をしかめた。
「どこが好きなのか教えてあげる」
 一生懸命なところ、見え隠れする不器用な優しさ。私を見るときの目。ファンシーなラッキーアイテムを持っているときの不釣り合いな佇まいも好きだし、名前を呼ぶときに声が穏やかになるところも好き。それから、ね。
「……もういい」
「まだあるんだけどなあ」
 言われている身にもなれだなんて。そんな照れ屋さんなところも可愛くて好きだよ。もう、緑間の全部が大好きだ。
「まあ時間もあるからね。いつか全部伝えてあげるから、緑間の好きなところ」
 これからも増えていって、伝えきれるかわからないけど。それまで緑間は私と一緒に居てくれるよね?
「……その後、もだ」
 どちらともなく唇が重なった。ああ、この唇からも好きという気持ちが溢れてしまいそうだ。

20120707