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 私の元彼、ボーダーでもかなり強い隊にいるみたいなんだ、とか言っても誰も食いつかないだろうし、私だってそんな惨めったらしい発言したくない。今、なんとなく思い出したかつての恋人。なんとなく、なんて言ったけど嘘だ。不意をつくと今でも考えてしまう。何故終わったのか、明瞭なきっかけは覚えていない。が、何をしたかはやたらと覚えている。
 公平と付き合うことになった日は、その日を忘れたくはないからとピアスを開けた。耳がじんじんして、痛かった。翌日赤くなった耳を見て笑う奴にあんたのせいよ、と言いたかったけど、ピアスをくれたのが嬉しくて許してやった。キューブのモチーフが可愛かったのは覚えている。付き合ってる間はよくそれを身につけていた。
 キスは、あいつが好物のコロッケを食べてたからか、唇がやけにつやつやしてた。奴は好きな食べ物がコロッケとか、エビフライやら揚げ物ばかりだったので作るときやたらと苦労したな。油がはねて火傷までしたのにできたものはやたらと不格好でむかむかして三分の一は自分で食べてやった。残りは太るぞ、とからかう彼の胃の中へ。怪我した手を包む公平のそれは大きくてあたたかかった。
 初めてつながった日は、痛くて痛くて柄にもないようなか細い声で泣いた。公平はごめん、と謝るばかりで動きをやめる素振りは見せないし。世間の男なんてそんなものなのだろうか。私はいっぱいいっぱいだったけど、公平もそうだったのだろうか。電気を付けていなかったから彼の顔はよく見えなかったのだが、付けておけば余裕のない表情も見られたのかな。明るい視界の下、でなんて今となってもできる気はしないけれども。
 今、隣に公平はいない。ボーダーの仕事が忙しいのか何なのか、詳しくは覚えてはないけど全くもって会わない日が続いて、気づけば恋人という関係ではなくなっていた。もはや、今では知り合いと言えれば良い方かとも思えるほどだ。
 彼にもらったピアスは、本人がたいした値段の代物ではないというからそれに見合った扱いをしていたら、なくなってしまった。それで面倒になってピアスをつけない日々が続けば、開けた穴もすっかり塞がっていた。
 いつぞや彼に作ったエビフライやコロッケだってもちろんあるわけないし、そのときした火傷は有り難いことに跡も残らずに治った。
 でも、奴に開けられた穴は今も変わらず有るし、非常に悔しいことだが奴はまだ私の中に存在しているのだ。声を上げて泣くこともできず、かつて彼と寝たときの様にぼんやりと天井を見つめる。

20140518