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「#エロ」のBL小説を読む
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 やっぱり首を飛ばされる感触には慣れない。いや、慣れるのも考え物だけど。首を飛ばされたから一発で戦闘からは離脱させられる。やることもないからモニター越しに私たちの隊とチーム戦の嵐山隊の様子を眺めるが、やっぱりこちらが圧倒的に押されている。あそこで欲を出さなかったらまだ粘れたかもしれない。そんなこと考えていたって後の祭りだ。ああ、負けてしまった。これから反省会だな、そして特訓だ。格上のチームで胸を借りるつもりでやったとはいえ、負けるのは悔しい、未熟な自分に腹が立つ。おそらくこの後は更に腹が立つことになるのだろう。先ほど飛ばされた首をさすり、重い腰を上げる。
 私の首を飛ばした奴が遠慮がちにこちらを見ている。こういうところがむかつくのだ。チーム戦中、時枝くんが隙を見せたのでアタッカーである自分がそれを突こうとしたら、それが彼らの狙いだったみたいだ。狙撃手の射線上に入った私はあっという間に首を飛ばされ戦線離脱し、指をくわえながらチーム戦を眺めるはめになったのだ。嵐山隊の狙撃手は佐鳥ただ一人、つまり私は佐鳥にやられたのだ。別にただ負けたからといって、佐鳥を恨むほど私は器の小さい人間ではない。佐鳥が私を負かした後の言動に腹が立つのだ。奴はいつも私を心配そうな目でこちらを見てくるのだ。生身の身体が無事かなんて、そんな開発室の技術が不安定だったら私は今頃ボーダーにいるわけがないだろう。佐鳥は普段つるんでる連中相手には勝とうが負けようがこんな態度はとらない。一応恋人という関係の私にだけこんな様子であるのが、自分が弱いと言われているみたいで、憐れまれているようで腹が立つのだ。佐鳥とやる度にいつも不機嫌になるのだが、その理由は教えてやらない。
「えっと、お加減は?」
「佐鳥の面見て最悪かな」
 そんな、と佐鳥がショックを受けているが知らんぷりだ。目の前の頼りない奴が先ほど私を一発で仕留めたとか屈辱だ。こんなへらへらしてるのに、狙撃は正確で、私よりも強い。
「……そんな私が心配なら、手加減でもすればいいじゃない」
 我ながら性格が悪いことを言った。手加減とか、そんなことをされた日には私はこいつに別れを告げるだろう。絶対に自分も佐鳥も許せなくなる。
「ごめん、それは無理」
 他の人にも、なまえにも失礼だから。間髪入れずにそう答えた佐鳥の目はいつもより真剣だ。普段は少し的外れで、三枚目寄りだがこういう奴だというのがわかっているから、私は佐鳥のことを完全に煙たがることができないのだ。……ほんの一瞬だけかっこいいと思ったのに、言っておいて私の様子を伺うのが惜しいところだ。
「ばか、頷いてたら生身で戦うことになってたわ。これからそっちもミーティングでしょ」
 早く行こう、と手を取ると佐鳥は私が機嫌を直したことに満足したのか調子に乗ってやたら強く握り返してきた。本当、調子良いなこいつ。私も佐鳥の一言でいつも通りになるほど単純ではあるが。認めたくはなかったが私たちは似たもの同士みたいだ。ミーティングへと向かう足取りは、軽い。

20140522