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「#エロ」のBL小説を読む
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 アクセサリーショップでかわいいなと手に取った物がそれだったり、最近学校でもそれを身につけている者が多かったから。
「だから、ね」
 机の上に置かれたピアッサーを指すと賢はいやいや、と何ともいえない受け答えをした。何よ、ピアスを開けたい理由を聞いてきたから答えたというのに返事がそれなんてつまらない。別に面白さを求めてはいないけれど。
「いや、理由はわかったけどさ」
 それでオレに開けさせようと思うのがわからない!とのことだ。いや、多分自分だと躊躇ったりしそうでこわいから。こういうときは他人に任せた方がいいかなって。これを言うとオレには無理ですー、だって。何が無理なんだ。別にピアス開けた人間が痛い思いするわけでもないんだから。
 ちゃんとしたところで開けるべきだよ、って賢にしてはまともな意見ではあるがそれは却下だ。ボーダーで給料を貰っているらしい賢とは違って、私はそんなにお金に余裕がないのだ。ピアッサーを買うのに躊躇ったほどには。その余裕のない経済事情をくぐり抜けて購入したこれを無駄になどしたくない。それを言っても賢はなかなか首を縦には振ってくれない。可愛い彼女が頭を下げてはいないけれどここまで押しているのに何がそこまでいやなんだか。
「だってピアスこういうので開けると大体の人痛いっていうじゃん」
 なまえはもしかしたら全然痛くなかった、っていう人かもしれないけど、オレは痛いかもしれないことをなまえにするなんてできないとうだうだ言っている。痛いことしたくない、させたくない、なんて過保護か。いや悪いとは思わないけど。不覚にも賢のその過保護さにちょっとほだされそうになっている自分もいたりするし。
「ね、本当に今ピアス開けなきゃだめ?オレ一緒にかわいいイヤリング探すし」
 まあなまえがつけるなら何でもかわいいって言っちゃうかもしれないけど、頼りない笑顔をこちらに向けてくる男は簡単に私のほしい言葉をくれる。ピアスを開けたいのは可愛いのをつけたいから、可愛いピアスをつけたいのは賢に「かわいい」って言われたいから。賢のいう「かわいい」は他の人が言うそれとは全然違う風に聞こえて、特別なのだ。耳にピアスをつけられない今でもそう言ってくれるなら、開ける必要ないじゃない。
「……私に痛いことできないって言ったら、賢私とえっちできないじゃん」
 気恥ずかしいのを誤魔化すために言ったそれは賢の顔を赤くさせたり、青くさせたりする。ごにょごにょしているが、まだするなんて一言も言ったつもりはない。そこでぼそっとごめんなさい、っていうな。いつかするつもりなんだなこいつは。私もそう思ってるけど。
「とりあえず、次のデートはアクセ探しだからね。可愛いイヤリング一緒に探してくれるんでしょ?」
 頷く可愛い彼氏に免じて、この少しばかり痛かった出費には目を瞑ることにしよう。このピアッサーの出番はしばらくなさそうだ、引き出しの奥でしばらく眠ってもらうかな。

20140602