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 背中が重い。菊地原くんに寄りかかられているからだ。やたらとこの子に懐かれている気がする。心当たりがないという訳ではないのだが。
 彼とそこそこ仲良くなったある日、菊地原くんをひがんでるのかわからないが、彼が聞いたらあまりよろしくないことを言っていた輩共がいたので、ランク戦のお誘いをして、根こそぎポイントを奪って最後に吐き捨てるように「菊地原くんよりも弱い私にこんな風にされてまだ彼のことを不当な扱いをするの?」と笑顔で追いつめてやったことがある。別に恩を売りたかった訳ではないので自分からそんなことをしたよ、なんて言わなかったが人よりも優れたものを持つ彼にはふとした拍子で耳に入ったのだろう。
「よくそんなことに無駄な体力と時間を使ったよね」
「馬鹿がいたからポイント稼ぎさせてもらっただけだよ」
「ふうん」

 私には菊地原くんの表情が読めなかったのだが彼との距離を縮めるには十分だったようだ。そして今に至る。菊地原くんは私にどう寄りかかると具合がいいのか色々と試している。懐かれることはむしろいいことで、拒む理由なんてないのだが、これはやたらと近すぎやしないだろうか。悪くはないけど、恥ずかしい。
「菊地原くん」
「なに」
「私一応女の子なんだけど」
「なまえさんって女の子って歳だったっけ」
「ちょっと、」
「何ムキになってんの、知ってるし」
 逆にぼくが歌川とか風間さんにこういう風にくっついてた方が気持ち悪いでしょ。なんとなくは菊地原くんの言うことがわかるけれども完全に納得することはできない。この子はよくわからない。嫌なものに向ける顔を私にしてきたことはないからいいが、それ以外のものに向ける表情が今一つ読みとり難い。
「なまえさんはこうされるのいやなの」
「いやではないけど、」
「ならいいじゃん」
 背後から頭を肩に載せられ驚くと「何その顔」と訝しげに見られてしまったから文句は言えなかった。確かにいやではない。でもけどって言ったじゃん。そこはけど何なのとか聞き返すところじゃないのか。言ったところで彼がやめるのかは考えにくいが。それに、聞かれたところで私は何と言えばいいのだろうか。恥ずかしいことを口走る予感しかしない。
「ぼくだってしたくないことはしないし」
 ……そうか、今菊地原くんは自分のしたいことをしているのか。そうなると可愛いとも思えてくる。私の肩に未だ預けている頭を撫でてみると「なに子供扱いしてるの」と文句を垂らされたので「もう女の子な歳じゃないお姉さんだから菊地原くんっていう男の子をかわいがってるの」と返したら珍しく苦い顔を向けられてしまった。男の子って、菊地原くんって難しい。

20140708