小説 | ナノ
「ご、誤解なんだ…」

まさか自分がこんなドラマに出てくるような台詞を言うだなんて思ってもみなかった。隠していたはずの秘蔵エロDVDが好意を寄せている彼女に見られてしまうとは。終わった。死にたい。死ねない。死にたい。僕の見苦しく口はぺらぺらと言い訳を吐き出していく。死ぬならせめて彼女の僕に対する心象を良くしたかった。それが僕の自己満足でもいい。助けて神様。

「これはその…弟のもので…」
「パッケージに付箋メモついてるよ。“一松兄さんはこのDVDみたいな妹ものと猫ものが好きです”って書いてある」

心当たりはあった。前にあいつの秘蔵のDVDと本を探して曝してやったからその意趣返しに違いない。トド松殺す。あいつを殺して僕も死ぬ。彼女はパッケージの女優をじっと見つめて何やら神妙な面持ちを見せている。何考えてるんだろう。気持ち悪い死ねとか思われてたら…思われてたら…

「妹もの…好きなの?」
「えっ、なっ、えっ…いや…」
「好きなの?嫌いなの?どっち??」
「す、すきです…」

何これ。何で僕好きな女の子に特殊嗜好調査されてんの…

「そう…」

そしてまた黙り込む彼女。いやもう本当に勘弁して!冷や汗がすごく出てくる。けどそんなことに構っている余裕は全くない。お馴染みの、緑のソファに座ってまじまじとDVDのケースを観察する彼女、それからそんな彼女の前に立つ僕。他の兄弟がいなくてよかった。彼女は僕の方に視線を向けてソファの端に移動した。そして空いたところをポンポンと叩く。座れってこと…?
彼女の隣に座ると彼女はパッケージを膝の上に置いてずいっと僕の方に身を乗り出した。近い。

「猫耳は着ければいいだけだから問題ない。けど妹になるには一松君の弟君の嫁になるしか道はないと思うのね」
「は?いや、いやいや」
「分かってる、それじゃ一松君の弟君に失礼だからね。それはしない」
「そういう問題じゃ…」
「でも擬似的になら善処するから!頑張るから!」

彼女の目に宿っている燃える闘志が見て取れた。そして彼女は「一松お兄ちゃん、私頑張っちゃうよー」と照れたように言って笑う。画面の中の女の子より目の前の好きな女の子。はー本当にマジ無理…

「一松君…じゃなかったお兄ちゃんどこ行くの?」
「と、トイレ…うんこしてくる…」
「そっか〜ごゆっくり!」

(20160320)
名無しさんリクエスト/誤解
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -