小説 | ナノ
「“チョロ松兄さんのチョロはチョロいのチョロなんですよ〜”」
「は?」
「って末弟君が言ってたよ。君はどれだけなめられてるの」

ちゅうちゅうとストローでクリームソーダを飲みながら彼女はそんなことを言う。末弟というのはきっとトド松のことで…っていうかトド松しかいない訳で、目の前の彼女と末弟との接点があったことを知らなかった自分はただひたすら口をあんぐりと開けることしか出来なかった。えっ、ちょっと待って何でトド松?ここでトド松?つーか物真似まったく似てないし!

「えっ、なっ、えっ、何で。てかチョロくないから」
「あは、焦りすぎだよ。アイスでも食べて冷静になろうぜ、ブラザー」

クリームソーダ用の、柄の長い銀色のスプーンが突き出される。スプーンの上にはバニラアイスがくたりと横たわっていた。一瞬間接キス…と躊躇うがチョロいとかそういうことを言われた後こういうことに怯むのはあまりにも情けない気がして、ぱくっとそれを口に入れた。ひんやり冷たいそれは口のなかで溶けて舌に甘ったるさを残していく。

「この前街で声を掛けられたんだよ」
「えー、あー、そう…」
「チョロ松君の物真似しながら声を掛けてきてさぁ」
「え!?ハァ!?」

バニラアイスをつつきながら彼女はこともなげにそう言う。物真似をしながらって一体どういうこと?

「いやー向こうは私たちが一緒に遊んでたのを知ってたみたいで。で、たまたま街で私を見かけて、良い機会だし話しかけてみよーって感じで話しかけてきたみたい」
「トド松…」
「はじめて見たけど本当にソックリだったね」

この顔がまだ四つあるのかーと見つめられて目線をそらした。頼んだ宇治緑茶を飲んでどうにか平静を保つ。

「向こうは騙す気満々でね。笑ったよ〜」
「ふーん…」

お茶の入ってるカップを眺めて返事をする。茶柱が立っているけど今のところ良いこととは遭遇してないし、ていうか寧ろ女の子と普通に会話のできる末弟トド松が意中の女の子と接触してしまって複雑な気持ちっていうか何というか…それにしてもトド松は一体何をしたかったんだ騙す気満々って訳がわからない。わけが…?

「騙されなかったの?」
「ん?」
「いや、だからさ。僕とトド松の区別ついたの?」
「そりゃ勿論」
「な、何で…?」

彼女は笑いながらスプーンの上にサクランボを乗せてそれを差し出してくる。

「正直、チョロ松君以外の兄弟が並んだら分かんないと思う。でも兄弟の中からチョロ松君を見つけ出すことは出来るよ。断言する」
「どうして」

彼女は「好きな人が見分けられないわけないでしょ?…ってちょっと今のは恥ずかしいセリフだったね。ナシにしてナシ」と笑って僕にサクランボを食べさせた。ほんのり甘いそれを食みながら心の中で前言撤回。やっぱり自分は自分が思っている以上にチョロいのかもしれない。

(20151121)
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