その後の久遠
久遠Side
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せりと再会して何度目かの"約束の地(カナン)"の来訪。
最近、せりがオレのことを"だらだら"とか"やる気がない"とか"面倒臭がり"だとか言う。
最初はそんなことを言っていなかったはずなのに、言い出したのは…絶対、いつもオレを睨みつけているあの仏頂面の差し金だろう。
別に俺は、だらだらもしていないし、やる気がないわけではない。
興味がないことをしないだけ。
無駄な労力を使わないだけ。
それなのに酷い言い草だ。
思い返せば、爺…レグにも苦笑されていた気がする。
――久遠様は、やる気さえ見せれば何でも出来るのに…。残念だ…。
最後には残念ばかりを呟いていた気がするけれど。
遥か昔、レグが教育係だった頃、オレは"力"というものをレグから習った。
紫堂の力は、自然の力を利用して自分なりに再構築するエネルギー放出系だけれど、オレの場合は布陣と言霊。
潜在能力は無論、それを拡げる知識が必要になる。
布陣の場合は、あらゆる布陣の書き方を知らねばならない。
言霊の場合は、数多くの祝詞を覚えねばならない。
双方に効力を持たせるための、長い集中力が必要になる。
各務の家は斎宮の流れ。
後世に伝わる奉納舞や神楽から、レグが独自に各務に教示した…特殊な守護石の顕現まで、レグからあらゆる知識を叩き込まれ、体術を…力を鍛錬させられ、毎日が過酷で疲れ果てていた。
だが弟の刹那の疲労度はそうでもなく、それが不思議で仕方がなかった。
オレの出来が悪いのかと思ったが、やっている量が違いすぎることにある時気づいた。
――久遠様の吸収力と成長は目がみはるものがある。ではこれもお教えしましょう。
当時、オレはレグに対する敬愛の念から、多分一生分の"やる気"をつぎ込んでいたんだろう。
しかしやればやる程、更なる課題が押し寄せてくるから、1つのことに囚われすぎて時間をかけることは出来ず、頭の切替を早めて淡々とこなす必要があったんだ。
ある意味、紫堂玲と同じタイプだ。
だからオレは――…
――いえ。久遠様は、元来飽き性なのですよ。
……今思えば、あの時から、断言されていた。
"興味がないものはやる気がない"
"飽きるのが早い"
それなら紫堂玲だって同じ…
――玲くんは、1つのことを大事にし続けるよね〜。
ではないらしい。
百歩譲ってオレが飽き性だとしよう。
しかしそれは時と場合によりけりで、更には後天性のものだ。
いまだ皆が皆、その表現でオレを揶揄するけれど、先天的に飽き性であったら、13年もせりを想い続けるものか。
だけど皆信じない。
酷い話だ。
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