マスクの下


吸い込まれるように茶屋に入ると、店員さんやお客さん方が一斉にこちらを凝視してきた。そりゃあ、有名なカカシさんがちんちくりんな女と入ってくれば注目したくなるのも当たり前か。
『餡蜜、餡蜜が食べたい』
「頼めば」
『すいません。餡蜜とお団子お願いします』
「何、団子まで食べるの。凄い食いしん坊なんだ」
『カカシさんの分ですよ』
そうか、と出されたお茶を啜るカカシさん。飲み方まで優美とは流石だ。それから運ばれてきた団子を取り、マスクを下ろす動作に息をのむ。
「いただきます」
じっと目を離さないで口元を見つめる。気持ち悪い光景かもしれないが、カカシさんのマスクを外す瞬間を見るチャンスなんて二度と来ないのだから。
「名無し、お茶足りないから追加で頼んでくれる?」
『あ、お茶お願いしまーす』
ふとカカシさんの皿を見ると、団子が消えている。串が綺麗に揃って置いてあるところを見て、気づく。
『お団子、もう食べたんですか』
「うん」
『早すぎですよ。喉に団子がつっかえたらどうするんですか』
「お茶を飲む」
『へ、り、く、つ』
ちょっとニヤッとしているカカシさん。これは完全に嵌められた。分かっててお茶頼めって言ったのか。
「マスクの下が見れるのは奥さんの特権だって、前に言ったでしょ」
『何か悔しい』
笑うカカシさんを余所に甘ったるい餡蜜を掻き込んだ。

 

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