一筋の光あらんことを


世界は終わりを迎え、そして新たな始まりを迎えたのかもしれない。

魔術のない世界、魔物のいない世界、神々が存在しない世界。
全ての存在が、自身の時間を全うし、その命を終えていく世界だ。

私達の軌跡を、私達以外、誰も知らない。

私は許されない存在なのだろう。
創造神はもはやただの少女と化していたのに、私は彼女を見殺しにした。
憎い存在ではあったが、ハトネは‥‥この時代では仲間だったのだ。

だが、フィレアもキャンドルも君も‥‥この罪を咎めはしない。こんな私を赦し、生きろと言う。
だが、違うだろう?
心の中では皆、泣き叫んでいるのだろう?

もう一度‥‥会いたいと。

本当に、これでいいのか?
ケルト‥‥君達が命を懸けて繋いだ未来を、私は再び壊そうとした。
ハトネだけじゃない。サジャエルも殺した。
なのに‥‥奴は、紅の魔術師は、君達との約束を守っているのか?クナイ‥‥君の名を名乗って。

私は‥‥妖精族は一体、何を憎めば良かったんだ?

世界を滅ぼそうとした私達だけが生き残って‥‥どうしろと言うんだ?

‥‥ハトネ。
次に君に会うのは、死の淵でだろうか?
その時に私は、君に何を言えばいいのだろう。

なぜ、容易く妖精族を犠牲にしたのか。私達の命は、世界などよりも軽かったのか?
‥‥やはり、今はまだ、恨み言しか浮かばない。

この世界、誰もが幸せなわけではなかった。
目的を遂げられないままいなくなった者もいる。
大切なものをなくした者もいる。
過去を、業を背負って生きている者もいる。


全てが美しいわけではない。
でも、全てが汚いわけではない。
だが、幸福がないわけではない。

だからこそ私は今、ここにいるのだろう。

きっと永遠に、笑って言うことはできはしない。
だが、心から言おう。

この世界に。
友や仲間に。
もういない君達にーー。

本当に、ありがとう。
心から、ありがとうを‥‥

私を信じ、私の憎悪を止めようとした、過去の英雄達、そしてこの時代の英雄達よ。
私は過去を忘れず生きよう。
忘れられた物語を、胸に秘めて‥‥


振り返れば、歩いて来た足跡が、軌跡が‥‥懐かしく輝いている。
そう、それはまるでーー。


〜『一筋の光あらんことを』<完結>〜


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