※現代パロです


幸福論、というものについて少し語らせていただきたい

人にはそれぞれ「幸せ」というものの形があるだろう
だがそれはあくまで論理までの話であり、実際に個々の「幸せ」の形を確定するのは非常に難題である
もちろん例外なく、自分にとってもだ。

「ユーリにとって幸せってなんだ?」
「どうした?急に」
「うーん…なんとなく?」
「なんだそりゃ」

呆れた様に、かつ優しく微笑む青年は台所で料理の最中であり、左手には調理器具が数個持たれている、恐らく軽く片付けながらの作業なのだろう
束ねた黒髪に灰のラグランシャツ、黒いエプロンがその姿と非常にマッチしている
まるで新婚さんみたいだな、なんて言った日の翌日は腰が痛くて立てなかった、理由は察して欲しい(まあ男役があいつだということを思慮しなかった俺も悪い)

そんなことがあった翌々日、痛む腰をさすりながら通勤していた自分の耳に飛び込んだ会話、俗に言う井戸端会議だろう、耳を傾けたのは気まぐれだ、だが

「子供が出来ない体質らしいよ」

「可哀想に」

「子供ができないなんて結婚しても幸せになれないじゃない」

その言葉に不意に胸が劈くように鼓動を打った
男である自分との間にユーリの子が出来ることは生涯ない

―それでも彼は幸せになれるのだろうか…?
そう思いルークは不安を脳裏に過ぎらせた

「もし自分が彼を不幸にしていたら」

それが怖くてしょうがなかったのだ

…そして冒頭へと戻る
少し過去の記憶に浸かってしまった思考を慌てて現在へと引き戻す
相変わらずユーリは料理を作っている最中だ、皿を出しているところを見るとそろそろ完成なのだろう

「じゃあ逆に聞くけど、お前は何が幸せなんだ?」
「んー…今みたいにユーリの料理を待ってるとき?」
「…そりゃあ嬉しいこって、ほら出来たぞ」

少し間があったのが気に食わないがユーリにはよくあることだ
そちらに気をとられるよりも今は目の前に出てきた自分の好物に目を輝かせてしまう
この様な部分は昔から変わらないルークの無邪気さだろう

「…知りたいか?俺の幸せ」

いただきます、と声をあげようとしたがそれはユーリの声で遮られてしまう
低い声に背筋が凍る、でも駄目だ、ここで逃げたら、逃げてはいけない

「…うん」
「…俺の幸せは


お前と一緒にいることだよ、ルーク」
「…うん…え、それだけ?」
「ちょ、それだけってお前な」

思わず噴出してしまったユーリにルークが少し不機嫌になる、ルークは何を言われるか身構えていたからその返答に気が抜け拗ねたのだろう
「一応プロポーズのつもりだったんだけどね」というと暫しルークは硬直して数秒後には茹ダコの様に顔を紅潮させていた
一世一代のプロポーズを「それだけ?」と言ってしまう鈍感具合、他の人が聞いたら呆れること間違いないだろう
だがこういったルークの部分もユーリは愛しいのだ

「んじゃ、気取り直して…ルーク俺と結婚してください」
「っ…こちらこそ、よろしくお願いします…」
「ははは、これで生涯幸せだな、俺たち」
「からかうなよばか!」

なんともムードのない形に仕上がってしまった婚約は二人の賑やかな声で締めくくられる
顔を紅潮させながらもユーリになでられるとすぐに機嫌を直してしまうルーク
それを満足げに眺めながらも微笑みを浮かべるユーリ
さてここで冒頭の題に戻ろう
自分の幸せを見つけるのは至極難しいことである
だがしかし「自分以外の人間」が見つけたとしたら、この幸福論というのはまた違う形になる

彼らの幸せとは。

「絶対一生離さねぇからな!」

「こっちの台詞だっての」

彼らの笑みこそがそれだろう

(生涯幸せな理由は?)











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