バウヒニアの花言葉 | ナノ





今日から生徒会漫画研究部合同の夏季合宿が始まる。
3泊4日のこの合宿のため、俺は―菊の協力を得ながらではあるがー慣れない準備を必死になって進めてきた。

舞台は勝手知ったる我が別荘。
毎年夏季休暇のほとんどを過ごすこの館は収容人数も設備もロケーションもまあ悪くはないと自負している。
イベントだって海水浴にBBQ、ティーパーティーに花火にスイカ割り、俺が思い付く限りの夏らしいイベントはすべて詰め込んだ、なんなら追加で肝試しなんか入れてもいいかもしれない。
それに夜にはみんなで遊べるようにトランプにUNOに百人一首、ありとあらゆるカードゲームを用意してある。
遊び疲れたらこの日のために使用人に手配させておいたふかふかのベッドや天然の温泉を引いた自慢の露天風呂にサウナが疲れを癒してくれるだろう。
それに加えて参加者の意見を元に作成した部屋割りもバスの座席表も全て完璧だ!
俺の全力を注いだ狂いのない完璧な合宿がいよいよ今日からスタートする!!


…はずだったんだが旅にトラブルは付き物で。


「おい…香、湾、お前ら何で勝手に座席変わってんだ?」

俺が準備した完璧な合宿〜バスの座席表編〜は早くも狂い始めていた。
今回移動に使用する学校所有のバスは運転席側が1人がけ席、乗降口側が2人がけ席各5列、1番後ろの席のみ4人がけの最大定員19名のマイクロバスとなっている。
俺は乗降口側最前列通路側席でその後ろはフェリシアーノとルートヴィヒにしておいたはずなんだが、最終確認を終えてバスに乗り込むと何故か香と湾が入れ替わっていたというわけだ。

「なんでって…そんなの決まってんじゃん、犯罪を未然に防ぐ為、的な?」
「そうだヨー!アーサーさんが隣のなまえに悪戯しないか見張るために場所変わって貰ったネ!」
「っお前らなぁ…!!!」

ふたりして俺を何だと思っているのだろう。
だがあの日みょうじを意識してしまってからというもの、淡い下心があった事は否定出来ないので全力で言い返せないのが痛いところだ。
下心って言っても無防備な寝顔見れないかなぁとか、そのまま俺に寄り掛かってくれないかなぁとか、そういう健全な願望なんだからな!あくまで俺は紳士なんだからな!勘違いするなよ!

「ヴェー!アーサー、俺もルートも車酔いしないからだいじょーぶだよー!」
「ケッセッセッ!俺様に任せとけって!」

と、後ろの方からフェリシアーノ(とギルベルト)の声が聞こえた。
席が変わったことでギルベルトの隣があの2人になったのか…後ろのマシュー大丈夫か?

「だいたい何でアーサーがなまえの隣なワケ?湾と女子同士座らせればいいじゃん。」

また新たな問題が生まれたところで香が珍しく割とマトモな事を言った。
ギルベルトとフェリシアーノならルートヴィヒが何とかしてくれるだろう。

「いや、最初はその予定だったんだよ。ただみょうじが車酔いしやすいって言ってたから責任者の俺が付いてた方が良いかと思ってさ。」

先に言っておく、これは断じて嘘ではない。
もし彼女の顔色が悪くなったら土地勘のある俺の判断ですぐに車を停められるし、万一間に合わなかった場合でもすぐに対処できる。
その理由で俺が隣になることにした、いや、本当に。
本当なんだからな。

「話の流れ分かりませんけどとりあえず気分悪くなったら遠慮なく会長の膝の上にエメラルドスプラッシュキメますね。」
「みょうじ…!」

と、そこでようやく本人が口を開いた。
その手には大音量で音漏れしているイヤホンが握られている。
妙に静かだと思ったら爆音で音楽を楽しんでいたのか。
というかどこから俺達の話聞いてたんだろう。
少しだけ動揺してしまう。

「そんなことより会長、合宿場所ってインターネット環境整ってますか?」
「あ?…あ、ああ…昨年内にWi-Fiは導入してるぞ。」
「っしゃあ!今日の自由時間久々にジョジョ観よっと!主題歌聴いてたら観たくなったんですよねー!」
「だからハイエロファントグリーンった感じ?」
「そんな感じ!会長もなかなかハイエロファントグリーンってますね!いや?どっちかっていうとブチャってるかな?」
「お、おう?楽しそうでなによりだ…」

みょうじの様子からさっきの会話は聞かれていないものと判断し、少しほっとした。
特に聞かれてまずいことは言ってないんだが悪戯だとか下心だとか内容が内容だからなんか嫌だ。
…というかエメラルドスプラッシュとかハイエロファントグリーンって何だ?

そんなこんなで安心出来たのも束の間なワケで。

「もー!なまえあんまりはしゃぐと酔っちゃうヨ!」
「酔ったらアーサーに好き放題されちゃうぞ的な。」

後ろの悪魔たちが再び騒ぎ始める。

「おい、香…このままこのバスお前んちに向かわせてやろうか?」
「え、好き放題って何の話かな?はっ…!会長まさか…最低!このケダモノ眉毛!」
「は!?ばっ、ちげえよ!そんなんじゃねぇ!」
「そんなんってどんなんですか?!言ってみてくださいよ!」
「え…あ、それはちょっと…恥ずかしいというかなんというかだな…。」
「えーヤダー。アーサー会長ったらーだいたーん、的な。」
「アーサーさんったらHENTAIネー。」
「だからちげえって言ってんだろ!!!」
「おーい!うるさいよ眉毛!お兄さんのトレビアンな移動時間邪魔しないでくれる?!」
「うるせえ黙ってろ髭!!」

関係のない髭まで参戦してきたところで助けを求め通路を挟んで隣に視線を送れば、菊が生暖かい目でこちらを見ていた。
よく見ると何か口パクで伝えようとしていたので集中して唇の動きを見ると…

「(ファイトですよ!)」

…なぁ菊、俺もう帰りたい。



18.移動中につきご法度です fin


■ジョジョASB版のブローノ・ブチャラティの中の人は杉山紀彰だッ!!


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