昨日買っておいた方がいいと言われ、学校行く途中で購入した飴の入った袋も残すところあと一つ。心底、買って良かったと思った。たかがハロウィン、されどハロウィン。もともとは外国の行事でしょう、なんでこんなに盛り上がるんだろう。授業終わってから学校すらも巻き込んでのハロウィンパーティーなんて。あれ、これはうちの学校だけなのか。平凡を築く私なのに、三年も通うとなにが常識なのかさえ分からなくさせる。氷帝学園恐るべし。


「よお、楽しんでるか。トリックオアトリート」


この一行事を作ったのは、考えるまでもなく彼だろう。嫌な時に会ってしまった。しかもナチュラルにトリックオアトリートを挟むな。だいたいあんだけお菓子貰っといてまだ欲しいって。しょうがないから残った最後の飴玉を跡部景吾にあげる。


「これだけか。まあ有り難く頂いていくぜ」


これだけで悪かったな。去っていく背中を見ながら彼は本当に私からお菓子を貰いにだけ来たのだろうか、と考える。意外に暇な人なのかもしれない。さて、お菓子も全部無くなったことだし、帰るか。


「先輩も来ていたんですか」


日吉くん。しまった、もう知り合いには会わないと思っていたのに、最後の最後で。あげるお菓子はもう持っていない。日吉くんがこんなパーティーに参加しているとも思わないけど、とりあえず帰る方向に持っていかないと。


「そういえば、棗さんからはまだでしたね。じゃあトリックオアトリート」


ああ、先手を取られた。あげる物なんてもうないよ、と鞄の中を意味なくごそごそする私に、持ってないんですか、ってなんか日吉くん、嬉しそうだな。


「いや、あるよ。ひ、日吉くんこそ持ってるのかい。えと、トリックオアトリート」

「どうぞ」


早。っていうかハロウィンにぬれせんて。日吉くんらしいけど。…じゃなくて、私は自分のことを考えなければ。お菓子お菓子…と探していると底の方に転がっていたのを引っ張り出す。


「…はい」

「………あったんですか。しかも梅昆布って」

「舌打ち、日吉くん、舌打ち聞こえたよ」


いつ買ったのかも覚えてないけど、今は梅昆布に感謝。お菓子くれなかったらイタズラするよ、って理不尽すぎるよ。
しかしハロウィンなのに、ぬれせんと梅昆布って…。


「なんや、自分ら。和風やなぁ」


通りすがりにも程はあるけど、私もそう思うよ。
けど日本だし。今だけは君との和風なハロウィンもいいかな、なんて思う。




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