「日吉なら部誌書いてるからまだ来ねーぜー」

「…そうですか」


そんなことはどうでもいいんだけど。それよりもドカッと目の前に座るこの人の方が気になる。
しかし特に話すこともなかったので、私は私で珍しく仕事をする。といっても撮った写真を仕分けしてるだけだから、大したことはない、と思う。


「あ!なぁー!この写真くれっ」

「ダメです」


向日くんが取った写真は鳥の写真。ほんとは空を撮りたかったのに、シャッターに合わせてたまたま写りこんでしまった、所謂ボツ写真だ。失敗した写真を人にあげるのは、ポリシーに欠ける。とでも言ってみる。そんなプライドなんかないのに。


「ほら!オレ、誕生日だし!◯◯も知ってんだろ」

「そりゃあ、あんだけ騒がしければ」

「んだよ、プレゼントとかないのかよー」

「騒がしいほど祝われれば充分でしょう」


向日くんとはD組のクラスメート。朝からまぁ、騒がしいことこの上ない。もう部活も終わって帰るだけなのか、既に制服姿の彼の荷物は、明らかに学校には似つかわしい可愛らしいラッピングされたプレゼントらしき物がちらちらと見える。いや、ほんとに、どんだけ欲しいんだよ。


「くそくそ!お前結構ケチだな!日吉みてー」


ぶっ。ひ、日吉くんみたい…!?なんだそれ、全然嬉しくないんだけど。
というか、ほんとに彼は何しに教室に来たの。
帰れよ、とか言うとまた怒るだろうなぁ。


「いいよ、じゃああげるよ」

「は?…マジで?いいの?」


半ばやけくそ。しかしこれで大人しくなるなら安いものだ。


「サンキュー!なんだお前いい奴だな!」


お前こそいい笑顔だな。じゃあ帰るわ!と教室をあとにしようとする彼は本当に一体何しに来たのか分からない。
何故かピョンピョン跳ねて帰る後ろ姿が、少しだけ可愛いな、と思ったのは誰にも言えない。




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