あれ。
少し席を外した間に、どこいった。周りを見てもない、放課後の教室なわけだし、誰もいない。あれ。
なくなったのは紛れもなくチョコレートというもので。
 
『2月14日。聖バレンタインの記念日。
この日に愛する人に(特に女性から男性に)贈り物をする。日本では1958年頃より流行。』
 
何気なく開いた電子辞書にはそう記されてあった。正直うへえ、ってなる。こういうイベントが苦手な女子もいることを分かって欲しかった。どうして流行らせた58年の人々よ。常にイベントにも周りにも流されない性分だったけど、あまりにも周りが五月蝿かったから作らざるを得なくなった。完全に流されてる。


なのに、ない。ものの五分も経ってないはずなのに。時間を見ると、もうそろそろ終わってこっちに来てもおかしくない時間になっていたから、早く探さないと。


「お待たせしました。…何やってるんですか」


遅かった。誤魔化そうかと考えたけど、私が待ってた意味がなくなるから正直に白状する、ごめんなさい。
暫く二人でチョコレート捜索隊を結成したけど、見付からずにあえなく解散。下駄箱に着き、あとはもう帰るだけ。ああ、ほんと何やってたんだろう。


「…棗さん、もしかして、これですか」


んー?、と見ると、確かにそれだった。え、え、どこに。日吉くんがそこに…と指差したのはごみ箱だった。
ご、ごみ箱!なんてベタな展開。さすがに食べ物だし、人にあげるものだし、なあ。


「これ、俺に、ですよね」

「う、うん。そうなんだけどね。さすがにね」

「食べていいですか」

「ん、うん?…いや駄目でしょう。ごみ箱に入ったやつだよ」


構いません、と包み紙を開けると意外にも中身はまだ無事だった。それを一つ摘まんで口へと運ぶ。


「……あんまり甘くないですね」

「まあ、ビターで作ったからね」


黙々と食べていく日吉くんをただ見るしかない。申し訳ないなぁ、とさえ思う。
そこでふと、日吉くんの荷物が少ないことに気付いた。テニス部と言えば、いつも人気で、今年も跡部景吾用にトラックが来たくらいだ。


「日吉くん……チョコ、ないの」

「ああ、来ましたけど、断りました」

「へえ………酷いね」


最後の一つを口に入れる。あ、結局全部食べちゃった。


「俺は、……貴方のしかいらないです」


そうなん…、え。ぼけっと返事しようとして、止まる。なんかこの子、さらりと恥ずかしいこと言った気がする。見るとどことなく、にやっと笑う日吉くんにやられた、と思う。


「チョコレート、美味しかったです。ご馳走さまでした」


うわ、私は今、とてつもなく自分の顔を見たくない。
今回は彼に一本取られた気がした。



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ベタ万歳\(^^)/
今年は跡部様は一万個いくかなぁ、
と密かに期待。
長太郎誕生日おめでとう!\(^^)/
と密かにお祝い。




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