一晩考えたものの、答えなんて出なかった。ということで、この問題は暫く忘れようという結論に至った。彼もテニスばかりで疲れていたんだ、そうしよう。


だいたい私のこの氷帝学園での生活は、平凡、目立たないをモットーに送ってきた。その為にはテニス部と関わらないことが第一だったが、去年、今年と叶わなかった。

一つは報道委員において日吉くんとペアを組むことになったこと。まぁこれは去年もだったし、さほど支障はない。問題は今年の氷帝新聞のテニス部担当になったことだ。他の女子なら喉から手が出る程欲しいこの担当を、くじ引きなんてもので当たった私は落胆以外の何物でもなかった。これ以上テニス部に関わる訳にはいかない、私の平凡な学園生活の為には。


「ずっと前から好きでした!」


デジャブのようなこのセリフを言ったのも、言われたのも私ではなく。よりによって日吉くんの告白現場に立ち会うとは、とことんついてない。溜め息混じりに早々と立ち去ろうとする。


「日吉は以外にモテるからなぁ」

「…出刃亀とはいい趣味だね、忍足くん」

「ん?○○さんほどやないで?」


そう笑う彼はいつからいたのだろう。第一、私は出刃亀などではない。


「ほっといたら誰かに取られてまうで」

「何が言いたいのかな」

「この前の試合に負けてから、だいぶ落ち込んでるみたいやからなぁ。部活にも来えへんし」

「だから、何が」

「今の日吉には支えてくれる誰かが必要や、ってことや」


ほんとにこの人は何が言いたいんだろう。氷帝テニス部の天才とやらの考えてることはイマイチ分かりかねる。


「…その誰かは、別に私じゃなくてもいいよね。そうだね、例えば今告白してる彼女なんかいいんじゃないかな、うん、お似合い」

「……それ、ほんまに言うてるんやったら、○○さん、後悔するで?」


後悔?私が?どうして。
彼の残した言葉はさらに私を悩ませる一つの原因を作っていった。分かったことは、忍足くんはよっぽどの暇人だった、ということだけ。




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