「俺は貴方が好きでした」
開いた口が塞がらない、とはまさに今の私の状況のことを言うのではないだろうか。
目の前の彼、日吉くんはいつもの無表情で立っている。彼の綺麗な茶色の髪が夕日に光って、眩しい。
今日はいつも通り、報道委員の仕事を終えて、家まで送ってくれて、たわいのない話をして、それで…それで?
「………え?」
相変わらず立ったままの日吉くん。最早私の聞き間違いだったんじゃないか、というくらいの空気感。もしかして、返事待ち?え、でも好きでした、はどういう意味?過去形?今はもう好きではないですよーていう報告?それともずっと前から好きでした、ってことか。うん、それなら文脈が合う。でも彼に限ってそんな言葉足らずなことを言うだろうか。
「…それじゃあ、お疲れ様です」
そんなことを悶々と考えてたら、先に切り出したのは日吉くんだった。
唖然とする私を他所に日吉くんはくるりと背中を向ける。私はその背中に、ただお疲れ様、と声をかけることしか出来なかった。
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