やっとのことで週末を向かえた。この五日間で、おそらく一生分の非平凡な日々を送った気がする。


"なんでお前があの時怒ったのか考えろ"


跡部景吾が無駄に綺麗な含み笑いとともに残した言葉の意味も、結局分からないままだった。気付いたら口に出してたんだ、何で?そんなの私が知りたいくらいだよ。


……忘れよう。
考えて出ない答えなど、考えても無駄なんだ。もういっそなかったことに――


何回目かの自己完結で終わろうとしたが、携帯のディスプレイに表示された名前にぎょっとする。
「日吉若」の文字、たった今忘れようと決めた問題の渦中にいる人物だ。


「も、もしもっ…ごほっごほ!げほ」

「……先輩」

「ごめん、大丈夫です」

「今、時間いいですか」

「大丈夫です」


むせた。自分でも思わぬ咳が出た。びっくり。だいたい委員会で一緒になって、連絡先を交換したものの、実際に連絡取ることなんて滅多にない。ましてや電話なんて。そりゃ咳も出るわ。


「明日、暇ですか?」

「明日、うん、いや」

「どっちですか」

「ひ、暇です」

「じゃあ、駅前に10時です」


うん、ん?なんかこっちのことはお構い無しに話が進んでいるのは気のせいかな。
文脈から読むに出かけるっぽい。国語は得意。誰と?と聞いたら、俺以外に誰がいるんですか馬鹿ですか、と言われた。私は馬鹿らしい。


「いや…きみ、日曜は部活でしょう」

「休みになったんです。だから誘っているんでしょう、馬鹿ですか。切りますよ、では明日」


切れた。しかも二回も馬鹿ときた。よっぽど私は馬鹿らしい。明日、明日か。


「なんだ、姉ちゃんデートかよ」

「ででででデート」

「どもりすぎ。明日出掛けるんだろ?電話の相手、男?」

「いや、そうだけど、」

「デートじゃん」


そうなのか。これはデートなのか。
いや、違う、相手は日吉くんだ。でも日吉くんは私が、いや、まてまて…


「うわああああああああぁぁ」


明日はどうやらデートらしいです。




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