天高く馬肥ゆる秋――
過ごしやすい季節になりました。ただ、朝の牛乳配達をするには厳しい季節。今日も眠たい眼をこすりながらの登校。
「あ、れ。春、髪の毛切ったんだ」
廊下で珍しく爆笑してる要の所に行ったら、昨日とは明らかに髪の長さが違う春。爆笑の、原因。
「棗ちゃ〜ん…」
「なんで泣きそうなの。似合ってるよ」
「オレと悠太の力作だよ」
だからか。うん、確かに天パはすごいことになってるけど、似合ってる、と思う。
「棗も切ってあげよっか」
「え」
「確かになっちゃんも長いよね!」
「や、遠慮します」
えーなんでーと言う千鶴だけど、別に二人に切ってもらう理由もないし。長いのには慣れた。
「でも、髪長いまま男装してもあれじゃない?」
「あっそうですよ!」
「平気。私、裏方だから」
この前役割を決めたとき、裏方を希望した。接客はバイトだけで充分。それに、料理とかは好きだし。なにより衣装は面倒くさい。
私が裏方ということに、ぎゃーぎゃー騒ぐ千鶴と祐希。なぜ君たちが騒ぐのだ。
面倒くさいことは、やらない。そういうのはやりたい人とか似合う人がやれば良し。
…と思ってたのに。
「あ、ねぇ○○さん。文化祭の役割なんだけどーホールやってみない?」
最近の授業は文化祭の為、LHRが多い。ぼーっとしてたらクラスの女子に話しかけられた。
「え、なんで」
「あ、え〜と、人数も…なんだけど、○○さんに着てもらいたい衣装があるというか…」
ねえ?とお互いに顔を見合わせる彼女達。つまりはあれか、私に男装をしろということか。ほんとは気が進まないけど…
「あー…いいですよ」
「えっ!?い、いいの!?」
「うん。あ、でも私、衣装とか作れないけど」
それは私たちが用意するから大丈夫!と嬉しそうに戻る彼女たち。わざわざ言いに来てくれたわけだし、引き受けたけど。あんなに嬉しそうにさせられちゃぁ断れない。ただ、大変そうだ。
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