ある日の昼休み。去年に引き続き、図書委員の私は当番のためカウンターに座ってる。
本は好き、って言っても要から借りたミステリー小説くらいしか読まない。古いインクの匂いとか、静かな雰囲気がなんとなく好き。
「あ、…貸し出しお願いします」
適当に読んでた文庫本から顔を上げると、同じクラスの女の子が立っていた。
昨日、悠太に告白した子、
バイトがあったから早々帰った私が、それを知ったのは今朝だった。
目の前の女の子、高橋さんはうちのクラスでも目立たない、というか大人しい子だ。女子は何かと面倒くさいから、あまり良く知らない。
「あの……」
ぼーっとし過ぎた。高橋さんの声で我にかえり、図書カードを探す。
「…高橋、さん、ですよね」
「え…っ」
「え?」
一応確認を取ったんだけど、違った?と思ったら、小さい声ですみません高橋です…と聞こえた。カードにハンコを押して渡す。
「2週間後までに返却して下さい」
マニュアル通りの言葉を言い、仕事終わり。律儀にありがとうございます、とお辞儀をして出ていった高橋さんを見送る。
そういえば、高橋さんと話したのは初めてだったなぁ、と思いながら読みかけの文庫本に手を伸ばす。昼休みの終わりのチャイムが鳴ったときだった。
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