世の学生たちが胸を踊らす夏休み。
私は近所の神社に来てます。お父さんからここの神主さん宛に、と荷物が届いた。たまに現地の美味しいお酒が届いてこうやってお使いを頼まれる。
縁側に座ってうとうとしてたら、春からメールが入る。今夜の祭りへの誘いだった。
「祭り……」
いいや。人混みは嫌い。お金かかるし。
「えー、いいじゃない!行ってくれば!」
傍にいたここの奥さんに言われ、浴衣あったかしら、とかもう準備まで始めてしまった。これは行くしかなさそうだと春に分かった、と返信する。
……待ち合わせより早く着き過ぎた。仕方なく人があまりいない所で待つことにする。
「ねー、お姉さん、一人?」
顔を上げるといかにもなお兄さんが二人立っていた。
「いえ、待ち合わせなんで」
「えー だってずっと待ってない?」
「俺たちと一緒にいこーよー」
なんてしつこい人達だ。面倒くさくなって、その場を立ち去ろうとする、が、捕まった。
「ね、俺たち奢るからさっ」
肩に手を置かれ、近くなった距離から香水が匂ってきて顔をしかめた。思わず手を出しそうになる。
「あー ちょっとすいません。その子、うちのなんで」
返してもらえますか、という声の方に向けば、祐希がいた。「ああ!?んだお前」と言われながらも華麗にスルーして、私の手を掴んで歩き出す。さすが。
「なに絡まれてるの」
「うん ごめん」
助かりました、と言ったら祐希がちらっとこっちを見る。
「どうしたの、浴衣」
「ああ、うん。き…させてもらって」
着せられて、と言いそうになって言い直す。でも動きづらいのは確かだ。
「…似合ってますよ」
「ありがと。……すごい棒読みだったけどね」
ついていった先にはみんながいた。千鶴が手を振っているのが分かる。まだ祭りは始まったばかり。
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