初会


同じような敷地、同じような建物の作り。それがこんなにも趣あるように感じられるのは、京の都と呼ばれる土地のせいなのか。
なまえは姉妹校交流会の為、一年では乙骨とともに参加することになった。一日目は団体戦。ミーティングも終わり、乙骨と一緒に行動するはずだったが、五条に呼ばれた乙骨は「ちょっと行ってくるから待っててね」と言い残してどこかに連れられてしまった。なまえは手持ち無沙汰だった。見知ってる風景の、だけど見知らぬ土地。暇すぎて爪先で地面を弄っていたなまえの少し遠くで、人が来るのが見えた。何故分かったか、髪色が余りにも綺麗な空色だったからだと思う。


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「そっか、霞も一年生だったんだ」
「はい。なまえも、一年で交流会参加なんて凄いですね」


京都高専の同じ一年生である、三輪霞。初めはその髪色に目を奪われたが、挨拶もそこらに二人はすぐに意気投合した。何か共通点があった訳ではない、ただなんとなく雰囲気や話すテンポの波長が合ったのだと思う。二人で並んで歩く速度も、幾分か背の高い三輪が合わせて歩いてくれているのだろう。


「ううん、私って言うよりもう一人一年生と一緒で。私はそのオマケ?みたいな。霞は出ないの?交流会」
「出ないですよ〜、二年生怖いから。来年一緒に出るの嫌だなぁって思ってるくらい」


そう肩を落とす三輪に、なまえも苦笑いを向ける。これからその怖いと言う二年生と対峙するんだけどなぁという言葉は口にしないでおいた。


「京都校の一年生は何人いるんだっけ?」
「三人です。私ともう一人女子生徒と、あと男子が一人」
「あ、そっか!こっちに真希の双子の妹がいるんだよね、会ってみたいと思ってたんだった」
「真依ですね、さっきまでいたんだけどなぁ」
「東京は五人だけど、三人は今日来てないから。いつか同級生で集まったりとかしてみたいなぁ」
「いいですね!いつか、出来ればいいですけど、」
「ここにいたのね、霞」


三輪を遮るようにした声に振り返ると、ボブヘアーの黒髪の女子生徒。切れ長の目の、美人顔。すぐに真希の妹だとなまえは分かった。


「真依」
「わあ!やっぱり雰囲気は真希に似てる」
「…誰よ、この小さい子」
「小さい子……」
「東京校の学生ですよ、今日の交流会に参加する同じ一年生の」
「みょうじなまえです、初めまして」
「言っておくけど、私真希のこと嫌いなの。二度とその名前を口にしないで」


ツン、と言い放つ真依に目をぱちくりと瞬きするなまえに、三輪がこういう子なので、と小さく耳打ちする。


「でもうちの真希もツンデレだから。なんとなく分かる」
「誰がツンデレよ」
「あ〜何か分かります」
「霞」


すみません…と小さく笑う三輪と、それを戒める真依の様子がなんだか東京での自分達と重なって見えた。


「それより貴女、交流会出るんでしょ。時間はいいのかしら」


真依の放った言葉に、なまえはハッとした。そもそも場所を移動してしまったら、乙骨を待っているはずだったのに。完全に忘れていたなまえは慌てて携帯を取り出すと、3件ほどの乙骨からの着信が。折り返すと秒で出た乙骨に、食い気味で謝る。「すぐ!すぐ行くからっ」と返事をして通話を切った。


「ごめんね、霞。色々話せて楽しかった」
「私もです」
「じゃあ、またね。真依も」
「私は別にいいわ」
「そう言わないで、今度東京来たら案内するから」
「……早く行きなさいよ」


そうだった!と慌ただしく走って行った背中を見送る。身長でいったら西宮と同じくらいなのだろう。それよりもだいぶ幼く見えた彼女に、やはり金髪でピアスを付けた西宮は、舐められたくないという効果はちゃんと出ているのだとなまえと比較すると分かった。


「あんなザ普通みたいな術師、霞以外にいたのね」
「それ褒めてないですよね、真依」
「あんなんで真希と上手くやれてるのかしら」


そう呟いた先の小さな背中は、もう見えなくなっていた。せっかくだし見学でもしませんか、という三輪の提案に答えるように真依と三輪は歩き始めた。




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