08.


3月に入ってからもう半分は過ぎたと言うのに、なまえは一度も教室に姿を見せていない。授業を受けていないのだ。真希の話によると、最近は寮にも帰ってきてないらしく、冥冥との修行場と医務室の行き来だけ。休んでいる間の授業の内容は、医務室で補修を受けたり真希がたまにノートを持って行っているらしい。


「みょうじさん、大丈夫かなぁ」
「おかか」
「狗巻くんも会ってないんだもんね」
「真希は?なまえの所行ってるんだろう」
「ああ、」


真希が先日医務室でなまえに会った時は、食事を取ったのであろう丼ぶりが3つほど机に重ねられていた。病人って訳ではないから、確かに食欲はあるのだろうが。ただ、その姿は其処彼処に包帯が巻かれていて、一番最初に出会った時を思い出す。その姿とは裏腹に明るい声は、真希も良く知るなまえそのものだった。


「まあ、こんな姿見せられないから暫く会いたくない、って言ってたな」
「そ、そんな辛い修行なのかな…」
「来ない方が逆に心配だけどな」
「……しゃけ」
「それも、あと少しだろ。なまえの修行も今月でお終いだ」


修行期間は3ヶ月、それがもう終わろうとしていた。途中で達成出来なければそこで終了となるこの修行を、なまえは耐え抜いて来た。強くなる為に。
そんな彼女の強い決意に、会いたいなどと簡単に言ってはいけないと、狗巻は思っていた。なまえの想いに応えるにはただ一つ、狗巻自身も尚強くなること。それが、狗巻もまた一級術師になる為の任務に向かう糧となっていた。


「棘はこれからまた任務だっけか」
「しゃけ、明太子」
「気合い入ってんな」


おそらくこの任務を遂行すれば、準一級の昇級がほぼ確実となる。それは、気合い入るに決まっていた。


「あれ、憂太もいつからだ。海外行くの」
「あ〜あれ?いつだったっけ?確か五条先生に色々お願いしてたから」
「ちゃんと確認しといた方がいいぞ、悟いい加減だからな」
「しゃけ」
「真希さんは?このあと」
「私も今日は別の任務だな」
「俺も正道に呼ばれてるから行かなきゃな」
「じゃあ皆バラバラかぁ」


早いところだと暖かさから、梅や桜が咲き始める季節となった。小さかった蕾が、徐々に開花を続けている。それはまるで、新人呪術師として入学したてだった、5人のように。例えこの先進む道が分かれようと、いずれは一本の道に交わるであろうこの道を歩き続ける。4人は声を合わさずとも席を立って教室を後にした。




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