02.


第一の課題。
[ 白い烏を捕まえる ]


「白い烏なんて、いるんですね」
「白変種でね。最近見付けたんだ。とても貴重だから、この一羽しかいない」
「その子を捕まえればいいんですね」
「そうだよ、簡単だろう」


***


簡単なものか…!空に飛び交う数百羽の烏。その中からたった一羽の白い烏を捕まえるなど、どこが簡単なものか。天を仰ぐ先には、枝に止まった烏、空を自由に飛ぶ烏…。その目を通して映るなまえを見て、冥冥はさぞや楽しそうに眺めているのだろう。


「痛った…」


腕、足には烏に付けられた無数の擦痕。当たり前だが、生きてる烏は常に場所を移動する。ただでさえこの中から白い烏を見付けることさえ、困難だった。空に放たれてから未だその姿を見ていない。探そうと思い切って烏の群れに入れば、怒涛の勢いで襲撃に遭う。最早逃げることしか出来ない。そもそもなまえは結界師だ、相手との間に壁を貼る守る為の防壁。生き物を瞬時に捕獲する為の囲いなど、用途としてあまり使用しない。だからこそ気付く、これは対象を捕獲する正確性と、速度の向上が必要だった。
"守る"ことに固執したなまえの中には、この考えはなかった。ましてはそれを強化しようなどとは、とても。
でも、


(やっぱり、冥さんは凄い…!)


なまえの"呪記"による結界術のその実用性と、更なる向上を見抜いていた。さすがは、一級術師。この課題をこなせば手に入る力の手応えを、なまえは既に感じ始めていた。ただ、それは全てこなさればの話。再び天を仰ぐ。嘲笑うかのように回旋する黒鳥達。その群には"白い烏"は見当たらない。
この日は結局、一度もその姿を見ることはなく、一日目の修行を終えた。


***


金以外に興味がない。高専卒業後即フリーの呪術師として活動しているくらい自由な冥冥が、高専生の一人を弟子にしたと関係者に知れ渡るのは早かった。東京校の頭上には昨日まではいなかった烏の黒点が飛んでいるのだから、彼女がいることは知らない事実ではない。
なまえの冥による修行は、冥冥の仕事の都合もあるため週一で行われる。
挑戦は、あと三回だ。




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