任務


なまえが戻ってきたのはそれから15分も経った時だった。先ほどまで包帯で吊っていた右腕は自由になり、ぐるぐる回しながら戻ってきたなまえの顔は晴れやかだった。


「やー治った、治った!さすが硝子さん、最初からこうしとけば良かった!」
「おっまえなぁ……!」
「え、え?真希?なんで怒ってるの」
「心配してんだよなー?真希?」
「しゃけ」
「そんなんじゃねーよ!」


もう治ったから大丈夫だよーと言ったところで睨まれるだけだったから、素直にごめんと謝る。真希とは昨日、他の二人もさっき会ったばかりだが、とりあえず善い人達ばかりでなまえはそっと安堵した。まあパンダが人として数えるかどうかは別として。そんな空気を変えるかのようにパンッと手を叩く音で戻したのは五条だった。


「さ、じゃあなまえも戻って無事に新入生が4人揃ったところで、皆には早速実習に行ってもらいます!」


実習、その言葉を聞き4人の中に若干の緊張が走る。五条からは他に何の説明がないまま、なまえ達は簡単な準備を済ませ、伊地知が用意してくれた車に乗り込む。パンダは体が大きいから助手席、後ろにはなまえを挟む形で真希と棘が乗り込んだ。


「みょうじさん、怪我はもう大丈夫なのですか」
「はい、お陰様で。ご心配おかけしました」


バックミラーでなまえの姿を見て声をかけた伊地知も、そうですか、と返事した。まあ腕は治してもらったが変わらず左目を覆う包帯に、本当に大丈夫かどうなのか甚だ疑問だと伊地知も思ったのだが。車を走らせながらこれからの任務の概要を簡単に説明し出した。


「これから行く場所は山神トンネルというところです。ここ最近、そのトンネルを通る車の事故が多発しています。視察した結果、呪霊の姿を確認。皆さんにはその祓いをお願いします」
「トンネルって如何にもだね」
「だな」
「しゃけ」
「まあ元は心霊スポットとして、その界隈ではちょっと有名らしいので」


事故に遭ったという車もおそらく心霊スポットとして興味本位で行ったのだろう。確かにそういうところには呪霊は発生しやすいが、有名になったことにより人を呼びつけやすくなったのだ、だから被害が増えてきた。嫌な因果だ。
伊地知が車を止めたのは30分ほど走らせた場所だった。少し先に見える例のトンネルは点々と蛍光灯が点いているが、昼間だと言うのに薄気味悪い雰囲気に包まれていた。


「では、"帳"を下ろします。皆さま宜しくお願いします」


伊地知の声に合わせ帳が下ろされる。元々暗かったトンネル内も一際暗闇に包まれる中、4人は足を踏み入れた。




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