少し、調子が悪いかもしれないと思ったのは朝のこと。それもなんとかごまかしつつ、部活も終えるところだった。先輩たちの輪の中にいる棗さんを見付けた。テニス部に来たということはまた委員会関係で来たのだろう。
「出来上がった新聞の最終チェックに。……もうさ、こんな面倒なことお願いされるの、テニス部くらいだよ」
「せやろなぁ。まあ堪忍したってや、あの跡部やし」
「ちなみにその跡部は今席外してるよ」
「なんで」
肩落とす棗さんを見てたら目が合った。何故か疑問を浮かべたような顔をされたと思ったら近付いてくる。
「日吉くん。…………具合でも悪いの?」
え、とその場にいる全員がそういう顔をした。言われたオレも含めて、だ。
「は?日吉お前具合悪いの」
「え、いや、」
「や、良くないでしょ。顔赤いし」
とふと冷たい何かが顔に触れたのと、それが棗さんの手だと理解するのにそれほどの時間はかからなかった。顔が、近い。熱があるかないかはさておいて、それだけで自分の温度が上昇するのが分かった。恥ずかしさをごまかすように大丈夫だと軽く手を払う。
「顔赤いのは部活終わったばっかだからじゃねーの」
「んー…」
「とりあえずはい。測ってみれば?」
どこからか取り出した体温計を滝さんからもらう。棗さんは既にいなくてどっかいったみたいだ。大方跡部部長でも探しに行ったんだろう。しばらくしてピッと機械音が鳴って見てみる。そこには確かに部活終わりとはいえ異常に高い数値が表示されていた。やっぱり熱あるのか、と妙に府に落ちる自分と鳳たちの慌てるようの温度差が激しかった。あとは帰るだけだし、もうかまわない。
「…あ、何。日吉くん熱あったの?やっぱりー」
「つーか○○なんで分かったんだよ」
「うーん…なんとなく?昨日と?違う感じ?」
「なんで疑問系ばっかなんだよ…」
いや俺たちも毎日日吉と会ってるけど分かんねーよ、と呟いた向日さんの言葉は既に彼女の背中に向かってのものだった。他が気付かないような変化に、貴方は気付いてくれた。そう思うだけで…、とまで考えたところでこんなことを考えるのも熱のせいだ。と自分に言い聞かせて帰路に着いた。
気付かれるのは貴方だけ
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