「頼む!昨日の課題写させて!」


またかよ、と思わず言葉漏れそうになるのは目の前で手を合わせる向日くんのせいだ。たまになんてもんじゃない、しょっちゅうだ。毎回ちゃんとやってきてよ、と言ってもダメだったので諦めた。それはそれでやっぱりやってこないんだけど。


「向日くん…いつになったら自分でやってくるの」

「うーん、分かんね。だって○○の写せば全部合ってるしさー」

「もうその時点で先生は向日くんが自分でやってないのバレてるよ」

「なんでだよ」

「…向日くんが全部合ってるわけないじゃん、」


そう言うと怒った。というか小突かれた。いいのかい、そんなことしてると見せないよ、と言おうとしてクラスメートに話を遮られる。言われて廊下を見ると、確かに日吉くんの姿があった。


「…いや、向日くんに用じゃないの」

「ちっげーよ。日吉はオレに用あっても来ねーよ」


日吉くんは君の中でどんな後輩だよ。でも私にだって用があっても来ない。だいたいはメールで済むから。そんなこんなでお互いにそっちに用があるとか面倒くさいことになって、当たったら課題を見せることに。先に向日くんが日吉くんの元に行ったのを見ながら、そもそも早く確認すれば良かったと思った。二言三言しか話してないんじゃないか、向日くんはすぐ戻ってきた。


「オレの勝ち」

「えー」

「えー、じゃなくて早く行ってこいよ。あ、○○あと課題な!」


はいはい、と仕方なく自分のを向日くんに渡して廊下に出る。


「…向日さんと、よく話すんですか」

「え、いやよくは話さない。というか、まず私からは話かけないよ」

「じゃあ向日さんからなんですか」

「ん、まあそうだね」


え、なにその微妙な、日吉くんにしては凄く微妙な表情してる。あれ、そういえば何用でこんなとこまでこの子は来たんだろう。


「日吉ー嫉妬は見苦しいぞー」


横からひょこっと現れた向日くんに吃驚する。課題はどうした、と机を見ても広げっぱ出しっぱ。早く写さんかい。


「なっ…!別に嫉妬なんかしてないですよ!」

「え、なに。嫉妬?」

「オレと○○話してんの見て日吉の奴、妬いてんの」


とけらけら笑う向日くんと、どことなく顔の赤い日吉くんを比べては私はまるで笑えない。ど、どうすれば、この状況の中にいる私はどうすれば。といち早く冷静に戻った日吉くんが向日くんに言い放つ。


「…向日さんはこれ以上縮む前に、早く嫉妬出来る相手を見つけた方がいいですよ」


縮む、に反応した向日くんは既に去り行く日吉くんの背中にぎゃーぎゃー騒ぐ。中で、私はその後の言葉の方が耳に残る。結局は嫉妬したこと認めてるし。なんだこれ、向日くんだけじゃなくて私にも爆弾落としていった。怒りで顔が赤い向日くんの横で自分の顔も火照るのを感じて手で覆った。

それぞれりんご色





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