ある日の朝、いつも通り登校した学校で最初に聞いたのは、幼馴染みが付き合い始めたという噂だった。しかも自分の双子の兄と、だ。いつも一緒にいるから分かる、こんなのはただの噂だと。
「ゆっきー!聞いた?!なっちゃんとゆうたんって付き合ったの!?」
「…そんなの噂に決まってるじゃん」
「えぇーそうなの?…でもオレ意外にお似合いだと思ってたんだよね!」
一人でうんうんと勝手に納得している千鶴をもう無視する。お似合い?棗と悠太が?小さい頃からずっと一緒だったからそんなことを考えたこともないし、そんな風に思ったこともない。第一棗は今までもオレだったり、要だったり悠太に限らず二人で帰ったこともあるのになんで今さらそんな噂が立つのか、という疑問もある。だからといって、まさか本当になどとは思わない。
「あ、ゆうたんとなっちゃんだ」
二人がいつも通り歩いているだけなのに周りのこそこそした話は止まらない。千鶴は悠太に泣きつきに行ったのを遠くで見ても悠太が困っているのが見える。そうだよ、そんなのただの噂。だと分かっているのになんだか気持ちが収まらない。
「…棗は悠太とこんな噂立ってて嫌?」
「え、嫌…ではないけど」
「じゃあ嬉しいんだ」
「そういうわけでも…どうしたの祐希」
オレ自身も何が言いたいのか分からず答えられない。怒ったかとちらっと隣を見てもそこには変わらない棗がいる。
「今日オレ部活なんだけど、」
「うん、めずらしいね」
「待ってて」
「うん…ん、私?」
「そう。バイトないからいいでしょ」
半ば無理やりうん、と言わせた感じだけど、棗は嫌だとは言わない。悠太もいつもオレに合わせてくれるし、優しいけど棗も大概だ。
「明日になったらオレとも付き合い始めた、って噂になるよ」
「……その二股は困るなぁ」
そう笑う棗はあまり困ったように見えない。悠太と付き合い始めたということが、なんでこんな気持ちになるのか、これが何かは分からないままだ。
気にするのは君との関係
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