浅羽悠太ととうとう付き合い始めたらしい。そんな噂が立ったのはある日突然だった。いつも通りの朝、何故かテンションが高めの女子達に囲まれてぎょっとしたものの、聞かれた質問に一瞬え、っとなる。理解するまでにそんな時間はかからなかったから、冷静に二言返事で否定した。悠太と同じクラスだし、だいたいいつも一緒にいるし、なんで急に…という疑問は晴れないまま。下駄箱に居合わせた悠太と首を傾げながらも過ごすのはいつもの日常。


「ちょっとなっちゃん!!どういうことよ!」

「なにが」

「ゆうたんも!親友のオレに一言も言わないでー!」


キーっとハンカチをくわえる千鶴に呆れて笑いが出る。懐かしいなぁ、要もこんな気持ちだったのだろうか、と最早他人事のようにさえ感じる。


「えぇ〜?ただの噂なの?抱き合ってキスしてた、って」

「随分ヘビーな噂になってるね」

「やだ悠太のエッチ」

「ちょっと祐希……」


なんだか凄いことになってるなぁ、ってやっぱり他人事。所詮噂は噂。私自身は誰とどうなろうがあんまり頓着しない。しかも相手は悠太だ。否定するのはあまりにも簡単すぎる。

「昨日は悠太くんと棗ちゃん二人で帰ったんでしたっけ?」

「あー、そういえばそうだったな。……なんか誤解されるようなことあったんじゃねえの」


えー、と思い出されるのは昨日の帰り道。何も変わらないいつもの帰り道。誤解…?いつもとは違ったこと…。


「……あれじゃない。棗が転びそうになったとき」


悠太の言葉にああ、となる。確かに躓いた、転びそうになる直前で悠太が受け止めてくれたんだった。そうだ、あの状態だったら確かに見る人によってはそう見えてもしょうがないのかもしれない。結構盛られてる気はするけど。


「まあ…オレの時もそうだったけど。噂なんてすぐ消えるからな」

「そうですね、気にしないほうがいいですよ!」


気にする、ねえ。騒いでるのは周りだけで当の本人は茅の外。台風の目、ってこういうことを言うんだなって感じ。誰かと付き合おうが噂になろうが楽しいのは噂をしてる人たちだけ。迷惑とまではいかないけれど、暫くは噂の訂正をしなきゃいけないと思うと憂鬱だ。
目が合った悠太に肩を落とす仕草をするも、困ったように笑った。

他から見える君との関係





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