「テニス部の写真、戴けませんか!」


女の子から呼び出されることが増えたのはここ最近のはなし。十中八九テニス部関係だ。それは、日吉くんのことの時もあれば、今まさに起こっていることに関してが多い。もう、吐く溜め息すらない。


「ごめんね、それは禁止されているから」

「この間の新聞の写真、素敵でした!どうしても欲しいんです」

「写真を撮っているのは私だけど、所有権はないから…」

「…どうしても、ですか」


それを許してしまえば委員長と跡部くんに何を言われるか分からないんだよ。私にしてみたらこの写真の、どこがそこまで人を動かせる物なのかは知らない。けど、もう勘弁して欲しい、が本音だ。
今日の子は物分かりの良い子で良かった。下手すると団体でくるわ、引き下がらないわで、何を言っても聞いてくれない。その時は委員長を召喚したり、向日くんが来たり。彼は同じクラスだし呼び出されていることは知ってるみたいなんだけど、どうせ暇ならもっと早く来いよ、といつも思う。


「…棗さん」

「あれ、日吉くん。……何してるのこんな所で」


それはこっちのセリフだ、とでも言いたいような顔の日吉くんが何故かこの場所に現れる。


「向日さんに聞いたらここにいる、って」


また向日くんかい。良く知ってるなあ。と思いながらも日吉くんがじゃあここに来たということは、私に何か用があったんだろう。そう問うても答えがなくてはてなが浮かぶ。


「何か、されたんですか」

「?ううん、何も」


それでも訝しげな顔の日吉くんにまさか、と思うも一つの答えが浮かぶ。


「もしかして心配してくれたの?」

「……別にそんなんじゃないです」


そうですか。そう言う日吉くんの姿はもう背中しか見えない。まあ別に今まで深刻に何かあったって訳でもないし、大丈夫と言ってしまえば大丈夫なんだけど。


「でも、」

「うん」

「もし、何かありそうな時は………呼んで下さい」

「え、あ、うん」


すたすたと歩いて行ってしまう日吉くんのその表情は見えないし、読めない。分かりづらいけど、これは…やっぱり心配をしてくれてるってことだよ、ね。ちょっとは。
勘違いだったとしてもそういうことでいいや。そう思って少し駆け足で後を追いかけた。

不器用なやさしさ





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