あれ、と思った時には既に祐希が家に上がり込んでいた。そうして何事もなかったかのように座って、漫画を読み始める。こういうことは、割りと良くある。何しに来たかは分からないけど、なんとなく来ては何もせずに帰る。漫画は持ち込みだけど、祐希にしてみればジュースは出てくるし、テレビはあって、ちょっとした漫喫にしか思われてないんじゃないだろうか、私の家は。
「ねー、棗ーヒマなんだけど」
「いや、そんな急に。……悠太は」
「なんか部活の用か、なんかで。だから棗ん家で待ってるんじゃん」
そうですか。そんな目的自体は知らないけど。
それより、暇だと言われてもなぁ。そんな楽しめるものなんか私の家にはない。まあしょうがないからいつも通りお茶を入れて、余り物で貰った和菓子を持っていく。カーテンの隙間からの日射しが暖かい。
「せっかくのいい天気なんだから、祐希も出掛ければ」
「そんな棗は何してたの」
「今日は…洗濯して、掃除と…バイト」
「…………」
「なに」
「いや、……別に」
そんな目で見られても。まあ、だいたい想像はつくけど。持ってきた和菓子を食べながら、本当に他愛ない話をしたり、祐希が漫画読んでる間は私も家のことしたり。人が来ているにも関わらずこうしてもてなさなくてもいい関係にいられるのは、幼馴染みだけで。
「…なんか」
「うん」
「棗の家は…落ち着く」
「それは自分の家の方が落ち着くでしょう」
「うーん…」
机の上でだらっと腕を伸ばして座る姿はでも、まさに自分の家のよう。まあ、それだけ祐希も過ごしやすい環境なら、それはそれでいいんだけど。
そう思ったところで本日二度目のインターホンが鳴る。多分、悠太だろう。それを聞いて、ゆっくりと腰を上げた祐希と一緒に玄関まで行った。
陽気と同じは君との雰囲気
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