「○○さん、二年の女の子に呼び出されとるみたいやな」

「…何故、それを俺に言うんですか」

「いや、俺は岳人が見た言うてたから。あの二人クラスメートやん」


そういえば、前にあの人が忍足さんのことが苦手だ、と言っていたことがあった。そこまで接点があるかと言われると分からないが、向日さんと同じクラスなら、話すこともあったのだろうか。なんでも見透かされているような、話しているとイライラすると珍しく顔を苦くしたあの人を思い出す。


「…別に。俺には関係ないですから」

「ほんまにそう思うん?昨日日吉に告白してた子やで」

「は?」

「別に盗み見してたわけやないで。あん時○○さんもおったし」


なんだ?呼び出した相手はあの女なのか。何のために。それより昨日あの人は見てたのか、どこまでを聞いていたんだ。おそらく、それを忍足さんに聞いたところで答えてはくれないだろう。そういう人だ。
あの人もあの人で、初めて会った時から極力面倒なことは避ける主義の人だった。それが、俺のせいでここまでテニス部と関わりを持ってしまったこと、今の、この状況。あの人が避けてきていたものを、尽く巻き込んでしまっているのは俺のせいだ。あの女が、何を言おうとして呼び出したのかはしらない。気にならないと言ったら嘘になる。それでも今行ってしまえば、また巻き込ませてしまう。
それならば、


「俺には、関係ないことです」

「…ならええけど、」


もう嫌われてしまった方がましだ。





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