返事が欲しかったわけではない。ましてや付き合いたいなどとも、思わない。勝手に、終わらせるつもりだった。
言った後のあの人の顔が浮かぶ。少しだけ驚いた顔、すぐにいつもの無表情に変わった貴方は何を思っただろう。言われるのが怖くて、口を開きそうになった時に自分から別れを告げた。あのままだったら、何を答えてくれただろう。
"…何を、考えているんですか"
"え?"
"………"
"考えてないよ、何も"
"…本当だって"
"日吉くんはさ、…………"
「日吉くん、聞いてる?」
「………ああ。…悪いが、付き合えない」
怒ったような表情になった女に意味が分からないと思った。知らないやつにいきなり告白なんかされて、受けてもらえると思ったのか。
「…あの先輩でしょ」
「何がだ」
「いつも一緒にいる女の先輩!好きなんでしょう!?」
「あの人は関係ない」
そう、もう関係ない。こんなやつにまでさえ、言われるとはと思うと自分にも腹が立ってきた。捨て台詞のように吐かれた「嘘つき」の言葉にも、何も言えずまた苛立ち、壁に思いっきり拳を打ち付ける。
ふと、前に話した会話が頭をよぎる。あの時、あの人は俺に何を言っただろう。そんなに前のはずではないのに、穴が開いたようにそこだけが抜けている。
…昨日で終わらせたはずじゃなかったのか。もう何もかも忘れたと思っていたのに。俺の頭にはいつも貴方ばかりだ。
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