目の前にある例のチケットを見て、考える。
という行為を今日は何回行っただろう。跡部さんが何故これをくれたのかは残念ながらだいたいの想像がついた。よりにもよってホラー映画を、日付は明日。急にもほどがある。今、考えなきゃいけないことはテニスだけじゃないのか。跡部さんは俺に何をさせたいんだ。そう吐く溜め息ももう何度目か…。


"UFOの写真?"

"………はい、"

"え、すごいね、日吉くん"

"……え?"

"私、初めてみた"

"信じるんですか"

"うん、え?なに嘘なの?"

"いえ、嘘じゃないですけど…"

"じゃあとりあえず、新聞部に売り込みにいこっか"


目を閉じると思い出す。知っていく貴方は悪く言えば少し馬鹿な人だった。あんなに大人びているのに、騙されやすく、からかいやすい。だからなのか、だいたいの俺の写真は笑い飛ばされたりすることが多いが、この人は違った。結局、新聞部には相手にされずに記事にもされずに終わったが、それでさえ面白そうに笑った。そんな風に思ってくれる人は、初めてだった。
自分でも意識をしていたわけではないが、良く、憎まれ口を叩くらしい。俺はこんなにもこの人を知りたいと思っているのに、それでさえ面白そうにしているあの人に、少しでも制裁を加えたかったのかもしれない。


"………日吉くんはさ、考えすぎなんだよ"


ああ、そうか。考えすぎだったのか。
前にあれほど思い出せなかった会話が今は普通に出てきた。
開けた目の先。部屋の蛍光灯の、人工的な光に目が眩む。そんな重要性のある会話でもないのに、今の俺にはその言葉がすんなりと入ってきた。考えすぎ、か。

あんなに考えていたのが嘘だったかのように、気付いた時には、既に通話ボタンを押していた。





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