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「や……やりやがった。」
「……そんな……なんで……こんなこと。」
 こめかみから血を流し、六道骸はピクリともせず倒れている。
 お手本のように頭蓋に穴が空いているのが分かる。
 即死だ。
「捕まるくらいなら、死んだ方がマシってヤツかもな。」
「やるせないっス……」
 獄寺は顔を歪め、死体から目を逸らした。
 あの男を倒すためにここへ来た。それは事実だが、けれど、まさかこんな結末になるなんて。
「(何だ……この感じ……なんだろう……すごく嫌な感じがする……。)」
 一方でツナは、獄寺とは全く違うニュアンスで顔を歪め、顔を青ざめさせる。
 言葉で説明できる感覚ではない。ただ何か、強烈な、根源的な違和感があった。
「生きたまま捕獲はできなかったが仕方ねーな。」
 リボーンは淡々と言っている。特に六道骸の最期に疑念を抱いている様子はない。
 あのリボーンが、死体を見間違えるはずがない。
 ならば、やはりこの違和感は勘違いなのだろうか。自死の様を見て気分が悪くなっただけなのだろうか。
 絶対に何かがおかしいのに。
 吐き気を覚え、視線を伏せる直前、
 ネロが骸に歩み寄るのが見えた。
「愁……?」
 きっと聞こえていた。
 けれど彼はツナの方を見ることもなく、そのまま骸の前まで辿り着く。
「……骸、お前はどうして、……。」
 それ以上何を言うでもなく。ただ骸の側へ屈み、触れるでもなくじっと見つめている。
 近寄ることが出来なかった。
 ネロには表情が無かった。喜びも悲しみも、怒りや諦念すらも無く。
 どんな顔をすればいいのか分からないかのように。
 骸にとってネロは、どんな存在だったのだろうか。
 ネロにとって骸は、一体何だったのだろう。
 敵でも仲間でもない、家族でも友達でも他人でもない、他の誰にも及びもつかないような、ある意味では強い絆と呼ぶことも出来る、そんな二人なのだと、ツナにはそう思えてならなかった。
 ネロの横顔で、その口元が音を出さないままに動く。
 ごめんな、と。
 見間違えでなければ、確かにそう言っていた。

 
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